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過労死等(脳・心臓疾患と精神障害)の経年変化

過労死等防止調査研究センターでは、厚生労働省労災疾病臨床研究事業費補助金により平成27年度から「過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究」を開始し、過労死等の実態把握、その発生メカニズムの解明及び効果的な防止対策などについて調査研究を進めています。
これらの調査研究の成果については、毎年、厚生労働省から発行される「過労死等防止対策白書」のデータとして活用されています。以下に令和4年版の「過労死等防止対策白書」に掲載された、脳・心臓疾患と精神障害のこの 10年間にわたる変化を示します。
(以下、白書のとおり)

労災支給決定(認定)事案の分析

平成27(2015)年度から、平成22(2010)年1月以降に過労死等の労災支給決定(認定)された事案の労災 復命書等の調査資料を全国の労働局・労働基準監督署より収集し、分析を行っています。 令和3(2021)年度は、令和元(2019)年度の事案の調査資料を収集するとともに、平成22 年度から令和元 年度までの10 年分の脳・心臓疾患事案2,734 件と精神障害事案4,491 件の分析を行いました。

ア 脳・心臓疾患事案

調査対象の労災支給決定(認定)された脳・心臓疾患事案2,734 件のうち、男性が2,611 件(95.5%)、女性が 123 件(4.5%)でした。推移をみると、各年度では平成24(2012)年度の338 件をピークに、平成28(2016) 年度に微増となったものの、減少傾向が続いている。令和元年度は、総事案数216 件で、そのうち男性が206 件 (95.4%)、女性が10 件(4.6%)でした(第1-1-1 図)。

第1-1-1 図

発症時年齢(平均)の推移をみると、平成26(2014)年度以降、上昇傾向が続いており、令和元年度は52.2 歳 でした(第1-1-2 図)。

第1-1-2 図

死亡事案の事案数の推移をみると、平成25 年度の133 件をピークに減少傾向となっており、令和元年度は86 件でした(第1-1-4 図)。

第1-1-4 図

死亡事案について、死亡時年齢(平均)の推移をみると、平成29(2017)年度以降、大きく上昇しており、令 和元年度は51.5 歳でした。(第1-1-5 図)。

第1-1-5 図

イ 精神障害事案

調査対象の労災支給決定(認定)された精神障害事案4,491 件のうち、3,043 件(67.8%)が男性、1,448 件(32.2%) が女性でした。脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)事案における女性の占める割合(4.5%)と比較すると精神 障害を発病した女性の割合は高くなっています。精神障害事案数の推移をみると、平成24 年度以降ほぼ横ばいと なっています。令和元年度は、総事案数509 件で、そのうち男性が330 件(64.8%)、女性が179 件(35.2%)でした(第1-1-10 図)。

第1-1-10 図

発症時年齢(平均)は、平成22 年度以降、38.8 歳から40.1 歳の間で推移しており、令和元年度は39.2 歳でした(第1-1-11 図)。

第1-1-11 図

自殺(未遂を含む)事案数の推移をみると、近年、横ばいとなっており、令和元年度は88 件でした(第1-1-13 図)。

第1-1-13 図

自殺(未遂を除く)事案について、死亡時年齢(平均)数は、平成28 年度が38.9 歳であるほかは、40 歳代前 半で推移し、令和元年度は41.5 歳でした(第1-1-14 図)。

第1-1-14 図

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