労働者の体力・身体活動に関する研究
本邦が抱える最重要課題の一つに、“少子高齢化に伴う労働人口の減少”に関わる問題が挙げられます。 “年齢に関わらず、活力を維持し、元気に働く”ことを求める声は、個人、企業、行政それぞれの立場から今後ますます高まるはずです。

私たちはこの課題に“体力科学”の立場から貢献したいと考え、労働者の「体力」と「身体活動」に着目した研究に取り組んでいます。
Keyword
身体的体力
physical fitness
研究テーマ
→いかに評価し、高めるか?
Keyword
精神的体力
mental fitness
研究テーマ
01 「身体的体力」
様々な体力指標の中で、特に「心肺持久力」に着目した調査・実験に取り組んでいます。心肺持久力は疾病発症に強く関わる重要な健康指標です。労働者が自分自身の数値を年に1回でも知ることができれば健康管理に有用ですが、効率的な評価方法がないのが実情です。そこで、労働者の心肺持久力を評価するための簡易体力検査法として「J-NIOSH Step Test: JST」を開発しました。推定値の妥当性や信頼性に関するデータを論文*で報告しています。また、どのように労働者の心肺持久力を高めるかに関する研究にも取り組んでいます。*Matsuo T et al., Eur J Appl Physiol, 2020
So R et al., J Occup Health, 2022

“最大酸素摂取量”の測定

J-NIOSH Step Test: JST
02 「精神的体力」
人の体力は「身体的体力」と「精神的体力」から成ることが古くから言われていますが、「精神的体力」について掘り下げた研究はほとんどありません。しかし、メンタルヘルスの問題など昨今の労働者の実状を考えますと「精神的体力」は「身体的体力」と同等もしくはそれ以上に重要かもしれません。安衛研では労働者の「精神的体力」をどのように定義し、評価するかを検討するため、インタビュー調査やスマートフォンアプリを用いた実験を行っています。
Keyword
sedentary behavior
研究テーマ
→本当に健康に悪いのか?
Keyword
中強度以上の身体活動
研究テーマ
Keyword
研究テーマ
03 「座位行動」「MVPA」「Physical activity paradox」
最近、長時間の座位が健康に悪影響を及ぼすことがいくつかの研究で示されていますが、勤務時間のほとんどを座位で過ごすような働き方をする人は増えています。一方、「MVPA」とは強めの身体活動のことで WHO は「週に 150 分以上」を推奨しています。また、休日の身体活動が多いことは健康にポジティブに作用し、勤務中の身体活動が多いことはネガティブに作用することを表す「Physical activity paradox」と呼ばれる概念が注目されています。労働者を取り巻く以上の背景を踏まえて安衛研では、「デスクワークはどの程度 “悪” なのか」「日本人労働者の MVPA の実態はどうか?」「身体活動が健康に及ぼす影響は勤務中と休日で異なるのか」などの不明点を明らかにしていくために、ウェアラブル機器や質問票「WLAQ(ダブルラック)」等を用いて研究に取り組んでいます。

パソコンやスマホを使ってどこからでも回答できるWEBシステムを構築しています。 健康経営などで従業員の体力に注目されている企業担当者様や研究機関の方など、WLAQ調査にご関心のある方はぜひ、お声がけください。