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放射線業務従事者の健康影響に関する疫学研究(NEWS)の概要

安衛研一般公開、放射線業務従事者の健康影響に関する疫学研究(NEWS)

1研究の目的は?

東京電力福島第一原子力発電所で緊急作業*に従事した方々19,812名のうち、研究に同意した人たちを対象に生涯にわたる健康調査を行い、放射線による健康影響等を明らかにすることを目的としています。*国は2011年3月14日から同年12月16日まで、緊急作業に従事する方の被ばく線量限度を100mSvから250mSvに引き上げました。

2緊急作業従事者の年齢構成

年齢階級 年齢区分人数
(2015年時点)
20歳代 592
30歳代 2,752
40歳代 5,221
50歳代 5,759
60歳代 4,781
70歳代以上 696
不明 7

40~50歳代が中心となって緊急作業に従事されたことがわかります。

3研究参加者と不参加者の年代別割合 (2022年時点)

ご自身の健康に対して気遣う年齢となる50歳代からの参加率が増える傾向が見られます。

4将来的な予測人数の推移は?

2055年には、100%の人が60歳以上になります。

5研究課題の将来予測?

上記の研究参加に同意を示された方々を対象に重点的に研究する時期を予測して計画を立て、研究を進めています。その内容としては、質問票による業務歴、生活習慣、罹病歴などの調査、心理面接、一般健康診断などの健康調査と、がん登録によるがん罹患調査、死亡原因などの統計解析です。

大震災と緊急作業における放射線被ばくの影響として、心理的影響や白血病など早期の変化が心配されます。甲状腺や白内障も比較的早期から問題になります。がん罹患は急性影響があれば被ばく後10年未満から増加する可能性があり、慢性影響は、その後30~40年は続く可能性があります。罹患された方々の生化学検査等が必要な場合に備え、血液・尿などの保存も行っています。この対象者集団の年齢構成を考慮すると、がんによって亡くなる方の割合が一般の方よりも多いかどうかの結論を出すには少なくとも40年以上の追跡調査が必要となります。
こうした検討は当然のことながら被ばく放射線量別に検討します。また、統計解析は、生活習慣や業務内容、出身地などの偏りが生じないよう、交絡因子の違いにも十分な注意を払って解析します。

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