ロールボックスパレット(カゴ車)使用時に脚部を保護するプロテクターの開発
ロールボックスパレット(カゴ車)をご存知でしょうか(写真1)。スーパーマーケットやドラッグストアの店頭などでよく見かけますが、使用者からすると輸送時に荷を損傷しにくく、輸送と保管を一元化でき、冒頭で触れましたが店舗であれば商品棚としてそのまま使うことができるので、様々な現場で重宝されています。
写真1 ロールボックスパレット(カゴ車)
一方で、私たちの研究によってロールボックスパレット使用時に手足を負傷する災害が多く発生していることが分かりました。この手足負傷の大半は「激突」と「はさまれ」で、積荷が重すぎて思い通りに操作できず手足に激突するパターン、壁に幅寄せしようとした際に手がはさまれるパターンが典型的でした。このような負傷リスクを低減するために、私たちは2年前にロールボックスパレット使用時に手や足を保護するプロテクターの存在が不可欠と考え、広島県にあるアトム株式会社と共同で手袋に衝撃吸収機能を備えたプロテクターを開発しました。詳細は2年前の安衛研ニュースをご覧ください。
今回、新たにご紹介するのは、脚部(すねとアキレス腱周辺)を保護するプロテクターです。これまでにもすねとアキレス腱を個別に保護するプロテクターが市販されていますが、作業者の立場から見ると2つを別々に着用するのは面倒で、わずらわしいことが課題でした。そこで私たちは2ヶ所を同時に保護するプロテクターの開発に着手しましたが、開発過程では色々な困難がありました。
最大の課題は下腿部(ふくらはぎ)のサイズ差に対応した調節方法とすね・アキレス腱部に衝撃吸収部位が的確に配置されるようにするための工夫でした。この問題を解決するにはプロテクターを一体型として縫製するのではなく、分離できるようにすればよいのですが、当初の課題である着用のわずらわしさが解決できません。そこで2つの緩衝材はゴムバンドで装着することとし、さらに足首部のみを1ヶ所だけを連結し(図1-1)、面ファスナーで足首部を1回、ふくらはぎ部を2回装着する方式を考案しました(図1-2)。他にも夜間作業に配慮して、すね・アキレス腱部に蛍光イエローの反射材を貼付しました。
図1-1 下腿部(ふくらはぎ)のサイズ差に対応させるために工夫した構造
図1-2 下腿部(ふくらはぎ)のサイズ差に対応した装着方法(3ステップ)
このような開発過程を経て出来上がった製品が、平成26年9月13日–16日に東京ビッグサイトで開催された国際物流総合展2016において共同開発したアトム株式会社(広島県竹原市)のブースに展示されました。本製品の概要はパンフレット(写真2)をご覧ください。来場者の多くから「手足をぶつけるのはよくあるけど、こんなプロテクターがあればいいですね」との声があり、ロールボックスパレット使用時の手足保護に対する潜在的ニーズをうかがい知るよい機会となりました。写真3は展示ブースの様子です。
写真2 「ロールボックスパレット作業用脚部プロテクター」のパンフレット
写真3 展示ブースの様子
今回はロールボックスパレット使用時に脚部を保護するためのプロテクターの開発についてご紹介しました。その他にも私たちはロールボックスパレット使用時に役立つ情報を安衛研ホームページに掲載していますので、これらも併せてご活用ください。
- ロールボックスパレット起因災害防止に関する手引き(労働安全衛生総合研究所 技術資料 TD-No.4).[PDF]
- ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル 安全に作業するための8つのルール(日本語版、韓国語版)
※(2)のマニュアルは(1)の基本的なポイントを説明した概要版です