労働安全衛生総合研究所

過労死等調査研究センターにおける調査・研究について

1.過労死等調査研究センターの概要と体制


 平成26年11月1日付の過労死等防止対策推進法の施行に伴い、労働安全衛生総合研究所では調査研究のための過労死等調査研究センターを設置し、研究企画調整部、高橋正也センター長代理、研究所併任研究員によって調査研究の体制づくり、調査研究概要の取り組みを行ってきました。そして、4月1日付で私(茅嶋)がセンター長として赴任、吉川 徹上席研究員が加わり、大枠の体制が整いました。本センターの概要・体制についてはホームページ上のリンクをご覧ください。
https://www.jniosh.johas.go.jp/groups/overwork.html

2.現在の研究計画


 現在の研究計画については、まずはこれまでの過労死等の労働災害事例等の分析を行い、その発生原因について解明していきたいと考えています。それにより、過労死等の発生を予防するための対策が立てられるようになるのではないかと思います。研究については、疫学研究と実験研究の2本立てで行います。疫学研究では、過労死等のリスク要因を明らかにし、健康影響との因果関係を調べていきます。また、過重労働対策として効果的な職場環境改善とは何かについて提言できることを目指します。過重労働により、脳・心臓疾患が発生するとされていますが、そのメカニズムについては未だ解明されていません。実験研究では、長時間労働により、作業中にどのような心臓や血管系に反応が出るかを調べます。これにより、脳・心臓疾患の発症を予防するための循環器病管理方法についての提言ができることを目指します。また、労働者の体力を評価するための指標、検査方法の開発を行い、労働者の健康管理に生かせるようにいたします。

研究概要

 この研究チームの中には、本研究所のスタッフのみでなく、国立精神・神経医療研究センター、労働科学研究所、国立国際医療研究センターの専門家の方々にもご参画いただき、調査研究を進めていく予定です。

3.過労死等防止対策推進協議会と過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)


 一方、平成26年12月17日の第1回を皮切りに、過労死等防止対策推進協議会が開催されています。
先日5月25日に第5回の協議会が開催され、過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)がまとめられている段階です。

協議会のこれまでの経緯
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000061675.html?tid=224293
現在の大綱案
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/shiryou1.pdf

4.–過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることができる社会–


 人の命はかけがえのないものであり、どのような社会であっても、過労死等は本来あってはなりません。過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働く続けることのできる社会にすること、これがこの大綱の目的です。そのために大綱に沿った対策を今後実施していくわけですが、その中でも調査研究等は非常に重要な役割を占めており、協議会の中でもしばしば大きな期待の声が寄せられました。過労死等の実態解明のためには、疲労の蓄積や労働時間、職場環境だけでなく、その背景となる企業の経営状態や業界を取り巻く環境、労働者側の生活時間全体の状況等、さまざまな要因を分析していく必要があります。分析方法についてはまだ開発途上の状態であり、大綱が定まれば、本センターでの調査研究もそれに応じて進めていくことになります。
 当センターの調査研究はまだ始まったばかりでこの先も険しい道のりになると思っていますが、過労死ゼロ、過重労働による健康障害を出さないという目的を達成するための施策に資する成果を出すべく、研究所一丸となって頑張ってまいります。

(過労死等調査研究センター長 茅嶋 康太郎)

刊行物・報告書等 研究成果一覧