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介護者のQWL簡易尺度の紹介

高齢化の進展にともない、介護を必要とする人は増加の一途をたどる一方で、介護職員(以下、介護者と記載)の人手不足が慢性化しています。介護者は意欲を持って職に就いたにも関わらず、仕事にともなうトラブルや多忙な日々に追われるうちに「働きがい」や「意欲」を失い、離職に至るケースも少なくありません。このようなことから、近年では、離職防止や雇用促進などの観点から、働きやすい職場の構築が求められており、介護者の「労働生活の質(Quality of Working Life:QWL)」の向上が必要になっています。

労働生活の質(QWL)とは?

QWLとは、仕事のやりがいや働きやすさ、職務満足度などの勤労生活の質的向上に係わる概念のことです。

簡易評価ツール

QWLの評価尺度はこれまでにいくつか提案されていますが、本尺度は簡易的かつ迅速に介護者のQWLを評価できます。また、質問項目を抽象的にすることで、回答を他の人に見られてもあまり問題ないようにしています。

介護者QWL簡易尺度
働く“意欲” 1.大変低い 2.低い 3.どちらとも言えない 4.高い 5.大変高い
働き続けたい
“意思”
1.大変弱い 2.弱い 3.どちらとも言えない 4.強い 5.大変強い
業務に対する
“満足度”
1.大変低い 2.低い 3.どちらとも言えない 4.高い 5.大変高い
仕事の
“達成感”
1.大変低い 2.低い 3.どちらとも言えない 4.高い 5.大変高い

評価方法

項目ごとに当てはまる数字を○で囲み、4項目の合計点数を算出してください。合計点数が高いほどQWLは高く、低いほどQWLは低いことを意味します。介護施設全体のQWLを評価する場合には、介護者全員の合計点数から平均値を算出してください。

妥当性・信頼性

本尺度は、既存尺度との関係や反復測定などにより、妥当性および信頼性が得られています。詳細は、産業衛生学雑誌 64巻(2022年)3号に掲載の「介護者の労働生活の質(QWL)評価のための簡易尺度の提案」をご参照ください。

QWLの改善

介護者のQWLを改善するには、介護職場において介護者のQWL向上を妨げている問題を抽出し、その問題に対する具体的な対策を検討して取り組む必要があります。当研究所の「介護施設における介護者の労働生活の質(QWL)向上のためのアクション・チェックポイント」は、チェックリストにより問題点を抽出し、具体的対策例を参考に問題のある項目の解決策を考えます。QWLの改善で重要なことは、これらの取り組みを切掛けに改善しようという意識を持つことです。また、施設の管理者と介護者が一緒になって取り組むことも必要です。

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