研究報告 TN-83 の抄録
アンモニア圧縮機の溶接継手で起きた破壊事故の調査
TN-83-1 |
吉久悦二 |
冷凍装置用アンモニアコンプレッサーの溶接継手の破壊事故について原因を調べるために走査型電子顕微鏡による破面観察と溶接継手内に発生していたとみられる応力の推定を行った。その結果,溶接により作られた継手内の脆弱な部分がそこに局所的に生じていた高い応力により破壊し,継手全体の脆性破壊を引起したものと推定された。(図22,表1,参7) |
ウレタン・フォームの消炎能力とその応用について
TN-83-2 |
林年宏 |
フレーム・アレスタの消炎素子としてプラスチックを利用することの可能性を検討するため,種々の大きさの細隙を有するポリウレタン・フォームによる4.5 %プロパン–空気炎の消炎について実験した。実験は直径12インチ,長さ2.2m の密閉管中において行い,管の途中に装填したフォームにより消炎する限界のフォーム厚さを種々の条件下において求めた。フォームは多数の細孔を有する三次元網目構造であるが,この実験では25.4/N(N は1インチ間の細孔数)を平均細孔径( ㎜ )とした。火炎を受けたフォームの表面は焼損することもあるが,細孔の大きさと消炎能力の関係は従来得られている金属等の細隙による消炎に関する知見とよく一致し,細孔の大きささえ適切に選択すれば単発的な火炎に対して充分実用に供しうることが示された。また,タンク等の内部に充填して爆発を防止するための充填材としての応用についても検討したところ,仮にフォームの細孔中を火炎が伝播したとしても,発生する圧力はタンクの破壊に至らない程度となることがわかった。(表2,写真2,図7,参10) |
災害分析事例「重油脱硫装置の炭素鋼製高圧配管の破裂」
TN-83-3 |
田中正清 |
昭和57年3月茨城県の石油コンビナートで生じた重油脱硫装置の高圧配管の破裂による爆発・火災事故(死亡5名,重傷3名)の原因を検討した。広範な調査の結果,本災害の原因は同配管が水素侵食を受け強度が低下して破裂したためであることを確認した。その水素侵食の原因について2,3の現実味ある推論を挙げその可能性を検討した。 |
災害分析事例「採木場における安全帽の破損事故」
TN-83-4 |
深谷潔 |
安全帽を着用していた作業者に飛来物が当たり,安全帽は損傷し,作業者は致命傷を負った。同種の安全帽及びその部品に種々の荷重を加え,試験することにより,被災時の衝撃荷重,飛来速度などを推定した.この試験結果は,安全帽の防護能力の限界の目安になると思われる。(図15,写真8,表6,参考文献2)) |
C.T.Aを用いた災害分析手法について
TN-83-5 |
鈴木芳美 |
労働災害の分析手法としてのCTA(Causal Tree Analysis)の考え方と実施法の概略を紹介すると共に,建設工事における労働災害に対してCTAを適用した例を示した。
またCTAの結果の活用例として切取工事における土砂岩石崩壊による労働災害50事例についての分析結果から災害発生要因の出現頻度を示し,他の産業での事例との比較結果を示した。(表4,図9,参12) |