労働安全衛生総合研究所

ドイツ・シュツットガルト大学での在外研究報告(まとめ)

1. はじめに


 労働安全衛生総合研究所では、在外研究員派遣制度に基づき、研究員を海外の大学・研究機関へ派遣しています。この制度は、外国の大学・研究機関において調査・研究を行うことにより、研究員の資質・能力の向上等を図ることを目的としたものです。私はこの制度により、令和7年(2025年)2月から令和8年(2026年)1月まで、ドイツ・シュツットガルト大学のInstitute of Mechanical Handling and Logistics(IFT)に滞在しました。昨年7月のコラムでは、滞在開始から前半までの生活、滞在先であるIFTの紹介、研究状況などについてご報告しました。今回は、在外研究を終えて帰国しましたので、滞在中の研究内容と、ドイツでの研究生活を通じて得られた経験についてご報告します。


2. 研究の紹介


 私の研究対象は、クレーン等で使用されるワイヤロープです。ワイヤロープは、細い鋼線を多数撚り合わせた構造をしており、高い引張強度と柔軟性を併せ持つことから、クレーンやエレベータなど重量物をつり上げる機械に広く用いられています。一方で、使用中にはシーブと呼ばれる滑車を繰り返し通過するため、曲げ負荷による素線断線が徐々に進行します。そのため、ロープを安全に使用するためにはロープの損傷を適切に評価し、破断に至る前に交換することが重要です。IFTでは、ワイヤロープがシーブ上で曲げられる角度に着目し、この角度がロープの疲労寿命や損傷の進み方に及ぼす影響について実験的な評価を行いました。一定の張力を負荷したロープをシーブ上で往復させる曲げ疲労試験を行い、曲げ角度を変化させたときの疲労寿命を調査しました。


写真1 IFTの外観 写真2 ワイヤロープの曲げ疲労試験の様子
写真1 IFTの外観 写真2 ワイヤロープの曲げ疲労試験の様子

3. ドイツでの生活を通じて


 今回の在外研究員派遣では、研究面、生活面の双方で非常に多くの学びを得ることができました。滞在先であるシュツットガルトは、海外での生活に不安を感じていた私にとっても、とても暮らしやすい都市でした。約1年間の滞在を通じて、さまざまな行事や季節の変化を体験することができ、生活面でも非常に有意義な時間となりました。
 研究面では、IFTの研究者や技術者と議論を重ねる中で、自身の研究が国際的に見てどのような位置にあるのか、また今後どのような点を発展させるべきなのかを考える貴重な機会となりました。また、現地での共同研究や国際会議への参加を通じて、今後も継続して相談・議論できるつながりを得られたことも大きな成果でした。一方で、英語で研究内容を正確に説明し、議論を深めるためには、今後も継続的な研鑽が必要であると強く感じました。

4. おわりに


 今回の在外研究では、IFTの研究者・技術者との交流を通じて、自身の研究の国際的な位置づけを確認し、今後の研究の方向性を考えるうえで多くの示唆を得ることができました。今後は、今回得られた知見やつながりを国内での研究に活かし、ワイヤロープの損傷評価や疲労寿命予測の高度化に取り組むことで、労働災害の防止に貢献できるよう、より一層研究を進めてまいります。


(機械システム安全研究グループ 主任研究員 緒方 公俊)

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