令和七年度 安全衛生技術講演会 実施報告
令和7年9月25日(木)に安全衛生技術講演会をオンラインにて開催いたしました。今年も多数のご参加をいただき誠にありがとうございました。活発なご質疑も多数いただき、大変有意義な会を開催することができました。重ねて御礼申し上げます。以下、当日の様子を写真とともにご紹介します。
1. 主催者挨拶 所長 鷹屋 光俊
講演会の開催にあたり、労働安全衛生総合研究所の鷹屋所長から皆様にご挨拶申し上げ、各講演の概要をご紹介いたしました(写真1)。

写真1 鷹屋からのご挨拶
2. 講演(1)「有害業務健康診断の新たな戦略」 化学物質情報管理部 部長 山本 健也
化学物質情報管理部部長 山本は、「有害業務健康診断の新たな戦略」と題して講演いたしました(写真2)。令和6年4月の安衛法令改正で導入された「リスクアセスメント対象物健康診断」では、「健康障害発生リスク」を健康診断実施要否の判断に用いる、という革新的な発想が採用されました。ここでは、リスクベースへの転換期にある労働衛生・産業保健における「健康影響モニタリング」の考え方に基づき、化学物質のみならず他の職場有害要因においても、「リスクの低減による予防対策」および「起こり得る疾病を可能な範囲で予見すること」の重要性について概説いたしました。
各講演では参加者の皆様からオンラインでいただいたご質問やご意見を司会の労働災害調査分析センターセンター長の大塚が代読する形で講演者と議論いたしました(写真3)。

写真2 山本からの講演発表

写真3 オンライン参加者からの質問について質疑応答する大塚と山本
3. 講演(2)「橋梁等の塗膜はく離作業における労働災害について」 ばく露評価研究部 上席研究員 萩原 正義
ばく露評価研究部上席研究員 萩原は、「橋梁等の塗膜はく離作業における労働災害について」と題して講演いたしました(写真4)。近年、橋梁等の塗膜をはがす作業において火災や急性中毒が疑われる労働災害が多く発生しており、これらの作業現場では、除去した塗膜が周辺環境中へ漏れ出さないよう厳重な養生を行っているうえに、作業空間もかなり狭い場合が多くあります。本講演では、災害発生当時未規制だった物質を使用したはく離剤による災害事例や、塗膜はく離作業における危険有害性と対策措置についてご紹介いたしました。

写真4 萩原からの講演発表
4. 講演(3)「クレーン等に使用されるワイヤロープに生じる疲労損傷」 機械システム安全研究グループ 部長 山際 謙太
機械システム安全研究グループ部長 山際は、「クレーン等に使用されるワイヤロープに生じる疲労損傷」と題して講演いたしました(写真5)。クレーン等に使用されているワイヤロープは荷役作業を行うときにシーブ(滑車)を繰返し通過して曲げられ、この影響によりワイヤロープを構成する細線(素線)は徐々に破断していき、ゆくゆくはワイヤロープ全体が破断します。これらの原因として挙げられる事柄の一つに金属疲労があります。本講演では、ワイヤロープの疲労について当研究所で長年行われている研究から最新の研究までを、災害事例を交えながらご紹介いたしました。

写真5 山際からの講演発表
5. 講演(4)「大型建設機械転倒防止に関する地盤の支持力要件」 建設安全研究グループ 上席研究員 堀 智仁
建設安全研究グループ上席研究員 堀は、「大型建設機械転倒防止に関する地盤の支持力要件」と題して講演いたしました(写真6)。大型の建設機械は工事の省力化や工期短縮に大きな役割を果たしていますが、一方で、支持地盤の沈下に起因する転倒災害が度々発生しており、地耐力の確保は災害防止の重要な要件となっております。本講演では、地耐力の評価手法や新たに開発した試験法について説明し、転倒防止のために地盤が有するべき支持力要件についてご紹介いたしました。

写真6 堀からの講演発表
6. おわりに
オンライン配信による開催は今年で6年目となりますが(写真7)、多数の地域から250名近くの方にご視聴をいただきました。また、各講演に多くのご質問をいただく等、積極的なご参加もいただきました。多くのご質問があり講演中に全てのご質問にお答えができない場面もございましたが、時間の都合がございましたのでご容赦いただければと存じます。
また、講演終了後のアンケートでは約180名の皆様からご回答をいただきました。ご協力誠にありがとうございました。ここで、その一部をご紹介いたします。
「中小企業の場合、このような遠隔での無料講演などの機会を利用するのが理解を深める重要な手段の為、是非今後ともこのような場を提供頂きたく、また素人にも分かりやすい(あるいは素人が見落としやすい)守るべき要点をお示し頂ければ幸いです。」、
「最新の研究成果や科学的知見について、高度な内容でしたが、分かりやすい解説で理解がしやすかったと思います。」、
「非常に参考となる講習会でした。講義内の動画も大変興味深く拝見しました。講義内容をまとめて社内に展開したいと思います。」、
「研究成果を論文や行政政策に活かすのはもちろん、例えば講談社ブルーバックスみたいな本にまとめて分かりやすく発信すると、もっと研究所のことを知ってもらえると思います。」など。
次回、令和8年度安全衛生技術講演会も同じく秋頃の開催を予定しております。開催の概要が決まりましたら、安衛研ニュース(メールマガジン)や研究所ホームページ等でご案内いたしますのでどうぞよろしくお願いいたします。次回も皆様のご参加を心よりお待ちいたしております。
最後に本講演会の開催にあたりご協力いただいた関係機関の皆様にこの場をお借りして深くお礼申し上げます。
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| (a) 配信をサポートする技術スタッフ | (b) 開始前の接続テストとリハーサルの様子 |
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| (c) 冒頭挨拶前の様子 | (d) 会議室に設置されたカメラ、照明等の機器 |
写真7 オンライン講演会を配信したスタジオ(会議室)の様子











