2025年1月から労働者死傷病報告の電子申請は原則義務化されます
—労働者死傷病報告申請の2025年における変更点—
1.はじめに
2025年1月から労働者死傷病報告の電子申請が原則義務化されます。労働者死傷病報告は、労働者が就業中の事故によって死亡や休業した時に、事業主が所轄の労働基準監督署に提出するもので、労働災害の原因を確認することで労働災害の再発防止に役立てることを目的としています。ここでは、労働者死傷病報告申請の2025年における変更点について紹介します。
2.労働者死傷病報告
死亡、病気、けがを死傷病といいます。労働者死傷病報告は、労働者が就業中の事故によって死亡や休業した時に、事業主が所轄の労働基準監督署に提出するものです1)。労働者死傷病報告を提出する目的は、労働災害の原因を確認することで労働災害の再発防止を図ることにあります。労働者死傷病報告には、休業4日未満(図1)と4日以上(図2)の二種類があります2、3)。
図1 労働者死傷病報告(4日未満)2)
図2 労働者死傷病報告(4日以上)3)
休業4日未満の場合は、四半期ごとに発生した就業中の事故をまとめてその事故が起こった四半期の翌月末日までに提出するのに対し、休業4日以上と死亡の場合は就業中の事故が起きたら遅延なく提出することになっています2)。また、労働者死傷病報告(休業4日未満)と労働者死傷病報告(休業4日以上)の記載内容は、事業の種類や事業場の名称等、共通するところがありますが(表1)、災害発生原因や略図(災害発生時の状況の図示)等、異なるところもあります(表2)2、3)。
(文献2、3を元に作成)
表2 労働者死傷病報告(休業4日未満)と労働者死傷病報告(休業4日以上)の記載内容の違い(2024年8月現在)
(文献2、3を元に作成)
3.2025年1月からの労働者死傷病報告の変更点
業務上疾病発生状況等調査に用いる労働者死傷病報告は、2025年1月から電子申請が原則義務化され、それに合わせて報告内容が変わります。労働者死傷病報告(休業4日以上)の変更点は、事業の種類と職種のコード入力方式と、災害発生状況の原因の記載欄が分割されたことです(図3)4)。また、労働者死傷病報告(休業4日未満)で、これまで記載の必要がなかった労働保険番号、被災者の経験期間、国籍・在留資格、親事業場等の名称、災害発生場所の住所等を記載することになります4)。
図3 労働者死傷病報告(休業4日以上)の変更内容(文献3、4を元に作成)
2024年現在、労働者死傷病報告(休業4日以上)では、事業の種類と職種は自由に記述できる形式になっています(図2)。そのメリットは、事業主が自身の言葉で事業内容や職務内容を表現できる点です。一方、事業の種類(産業)や職種(職業)は細かく分類すると300種類以上5、6)あるため、回答に迷ったり、誤記載をすることがありします(図4)。しかし、コード入力方式に変わることで入力操作が簡易になり、入力の欠落が防げ、集計もしやすくなる等、より的を絞った事業の種類や職種別の災害発生状況と原因の把握が可能になり、提供された情報を十分に活かすことが出来ます。
図4 生菓子製造業で働く2人を例に(文献5、6を元に作成)
具体的には、事業の種類が自由記載から日本標準産業分類5)(分類コード4桁)へ(図5)、職種が自由記載から日本標準職業分類6)(分類コード3桁)へ変更されます4)(図6)。日本標準産業分類や職業分類を利用することにより、事業の種類(産業)は1,473種類5)、職種(職業)は329種類6)に分けることが出来ます。
図5 事業の種類:自由記載と日本標準産業分類の例(文献3、4、5を元に作成)
図6 職種:自由記載と日本標準職業分類の例(文献3、4、6を元に作成)
災害発生状況及び原因については、記載内容に変更はありませんが、「①どのような場所で」「②どのような作業をしているときに」「③どのような物又は環境に(化学物質による被災の場合、化学物質の名称を記載すること)」「④どのような不安全な又は有害な状態があって(保護具を着用していなかった等を記載すること)」「⑤どのような災害が発生したか」に沿って記載できるように変わります(図7)4)。災害発生状況及び原因を内容ごとに分けることで必要な情報の記載漏れを減らすことが期待されます。
図7 災害発生状況及び原因:一酸化炭素中毒の記載例(文献3、4を元に作成)
4.さいごに
1年間あたり約250件もの化学物質による疾病(がんを除く)の中から、特定の化学物質に偏った労働災害があることに気づくには、化学物質の名称が不可欠です。また、特定の産業や職業に偏った労働災害であることを見出すには、事業の種類(産業)と職種(職業)が必要です。職場における化学物質の取り扱いによる疾病の原因等を集計し、より的確な絞り込みを行う上で、労働者死傷病報告の電子化が寄与するものと期待されます。
参考文献
- 厚生労働省.労働災害が発生したとき[オンライン].URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/rousai/index.html(2024年8月27日検索)
- 厚生労働省.労働者死傷病報告の提出の仕方を教えてください[オンライン].URL: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/12.html(2024年8月27日検索)
- 厚生労働省.労働者死傷病報告(休業4日以上)様式[オンライン].URL: https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/17-download.html(2024年8月27日検索)
- 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課・労働衛生課.じん肺法施行規則等の一部を改正する省令案の概要(労働者死傷病報告等の電子申請の原則義務化等関係)[オンライン].URL: https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001230931.pdf[PDF](2024年8月27日検索)
- 総務省.日本標準産業分類[オンライン].URL: https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/R05index.htm[PDF](2024年8月27日検索)
- 総務省.日本標準職業分類[オンライン].URL: https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/shokgyou/21index.htm[PDF](2024年8月27日検索)