危険・有害性の情報を教えてくれる絵表示
世の中には、いろいろな危険物質があります。危険な物質であっても、必要なものはたくさんあります。たとえば、ガソリンや灯油といった燃料は、人が管理した状態で上手に使えばエネルギー源になりますが、想定していない場所で勝手に燃え始めてしまうと、人や物への被害を生じることになります。そこで、「ここには危険物がありますよ」という情報を周囲に伝えるために、ガソリンであれば「内容物:ガソリン」「火気厳禁」のような標識を付けます。
このような危険な物質を陸上で運送する時、日本国内では、その車両に標識を付けなくてはなりません。みなさんも「危」や「高圧ガス」を付けた車両をよく見かけると思います。このほかにも「毒」「劇」や「火」というものもあります。「毒」「劇」は毒物や劇物を運ぶ場合、「火」は火薬類を運ぶ場合に付けます。意味を持っている漢字を使うと、日本人には危険のイメージがつかみやすいですね。
日本での陸上輸送であれば、他国から来た車両が日本国内を走ることは、ほぼないでしょう。しかし、日本語がわからない人もいるでしょうし、化学物質を船舶や航空機で輸入したり輸出したりすることもあります。もちろん、海外での陸上郵送では、国境をまたいで車両が行き来します。この場合、文字に頼ってしまうと、書かれている言語の国としか行き来できません。
迅速かつ的確に危険・有害性の情報を知るとともに、行き先ごとに表示を付け替えるという煩雑さを避けるためには絵表示を使うことになりますが、この絵表示が国によって違っていては、まったく使い物になりません。そこで、2003年7月に国連勧告として「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:GHS)が採用されました。その中では、
- 化学品の危険性と有害性を一定の基準に従って分類すること
- 危険・有害性の内容を絵表示やラベルで示すこと
- SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)を作ること
が定められています。危険・有害性の分類項目は、現在、物理化学的危険性について14種類、健康及び環境有害性については12種類と多くありますが、分類の結果に応じて付けられるGHSの絵表示の基本は、以下に示す9種類です。
(絵表示はクリックすると大きいサイズで表示されます)
注1.自己反応性化学品と有機過酸化物の(タイプB)には、「爆弾の爆発」と「炎」の2つのシンボルが付きます。
注2.シンボルに加えて、その危険・有害性の程度に応じた注意喚起語(「危険」または「警告」)と、危険有害性情報が付きます(一部を除く)。
注3.複数の危険・有害性を有する場合は、該当するシンボルを並べて示します。
日本政府は、世界各国と同様にGHSの普及を進めているので、今後、目にすることが増えてくるでしょう。そして、現在の「危」や「高圧ガス」のマークが将来的にはGHSのシンボルに変わるのかもしれません。
なお、危険・有害性をどのような基準によって分類するのかは、詳細かつ緻密に定められているのでここでは紹介しませんが、興味ある方は下記のウェブサイトなどをご覧ください。
【GHSをさらに知るためのウェブサイト】
職場のあんぜんサイト:GHSとは
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankg_ghs.htm
国連欧州経済委員会 (UNECE)
http://www.unece.org/trans/danger/publi/ghs/ghs_welcome_e.html
化学品の分類および表示に関する世界調和システム (改訂6版:日本語版)
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/GHS_rev6_jp.pdf[PDF] 経産省と環境省のサイトにもあります。