労働安全衛生総合研究所

働く人の健康に関する研究施設の公開(登戸地区)
– 平成31年度一般公開を終えて–

1.はじめに

 当研究所登戸地区では、平成31年(2019年)4月21日(日)13:30~17:00に、研究施設の一般公開を開催しました。当日は天候に恵まれ、暑いくらいの日差しの中、127名の方にお越し頂きました。ご来場の皆様には、この場を借りて心より御礼申し上げます。
 公開内容は、講演2演題、施設紹介・体験コーナー7件、ポスター展示11件でした。当日お越しになれなかった方もおられると思うので、各公開内容を簡単に紹介させて頂きます。

2.講演

 はじめは「職場の音、生活環境の音 ~音のあれこれ~」というタイトルで、人間工学研究グループ統括研究員・高橋幸雄が講演しました。私達の職場や身の回りの生活環境では、小さな音から大きな音まで、様々な音が発生しています。講演では、職場で問題になる音と、その結果発症する騒音性難聴、日常生活における騒音への不快感や音に対する主観的な感じ方の違いなどについて、実際に様々な音を流しながら解説しました。講演後には災害ボランティアの方から避難所における騒音問題の解決法についてのご質問を頂き、熱心な議論が行われました。


講演1 「職場の音、生活環境の音 ~音のあれこれ~」

 次に、「熱中症救急搬送データから分かる熱中症の発症状況」という演題で人間工学研究グループ上席研究員・上野哲が講演しました。地球温暖化現象が深刻化する中、熱中症は私達が気を配らなければならない災害といえます。講演では、熱中症で救急搬送された事案の分析結果から、年代別、性別、気象条件等の違いで熱中症発症率がどれくらい異なるかを示し、どのような集団がどのような環境で熱中症を発症しているのか解説しました。講演後の質疑応答では、ますます増える可能性のある熱中症を予防するにはどうするべきか、熱心な議論がなされました。


講演2 「熱中症救急搬送データから分かる熱中症の発症状況」

 今回の講演では、会場が満席となったばかりでなく,活発な質疑応答も行われ、予定していた時間を大幅に超過しました。講演テーマへの関心が高かったことに加え、参加された皆様から熱心なご質疑を頂けたおかげかと、感謝しております。

3.施設紹介・体験コーナー

(1)体力を測ってみよう!
 高齢化社会を迎えた今、年齢にかかわらず、永く、元気に働くことが出来る社会が求められています。そのために必要なものは、やはり体力だと考えられます。今回の公開では体成分分析と心肺持久力テストを体験して頂き、その結果を分りやすく解説しました。


「体力を測ってみよう」

(2)睡眠の不思議:睡眠脳波を見てみよう
 私達の1日の生活時間の約3分の1は睡眠が占めています。とても身近で大切な生体現象である睡眠について理解を深めて頂くために、睡眠脳波や睡眠を測るツール等を紹介しました。来場者された皆様の脳波や、睡眠中の脳波を実際に測定することはできませんでしたが、以前に測定したデータや、職員に機器を装着して測定している様子を見て頂きました。


「睡眠の不思議:睡眠脳波を見てみよう」

(3)電子顕微鏡によるホコリの観察
 小さな粉じんや、アスベストなどの繊維状物質を観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM)が使われています。ここではマイクロメートルからナノメートルサイズの微小粒子を実際に観察し、粒子の大きさや形状を計測する意義について説明しました。


「電子顕微鏡によるホコリの観察」

(4)DNAってどんなもの? バナナからDNAを取り出そう!
 人を含むほとんどの生物の体は様々な種類の細胞が集まって作られていますが、その細胞を作る設計図として機能するのが「DNA」です。ここでは、その細胞を形作っているDNAをバナナから抽出する体験をして頂きました。


「DNAってどんなもの? バナナからDNAを取り出そう!」

(5)紫外線で見てみよう、測ってみよう!
 私たちは太陽からの紫外線を浴びて生活しています。紫外線には様々な害もある一方で、紫外線を利用したものも多くあります。ここでは紫外線の性質や危険性などについて紹介するほか、紫外線反応ビーズを使った工作実験を通して、紫外線について考えて頂きました。


「紫外線で見てみよう、測ってみよう!」

(6)『クロマトグラム』ってなあに?
 いろいろな物質が混ざりあったものを分離する手法をクロマトグラフィーといい、どのように分離したかを示す情報をクロマトグラムといいます。この手法はどのような物質がどのくらい含まれているかを調べるために使われます。ここではクロマトグラフィーを体験して頂き、混ざりあったものがどのように分離されるのかを見てもらいました。


「『クロマトグラム』ってなあに?」


(7)あなたの体は振動をどこで感じていますか?
  身体が振動を受けることにより、さまざまな問題を生じることがあります。ここでは振動実験台に乗って、振動を加える向きや振動の周波数を変えながら、振動を感じる身体の部位がどのように変化していくかを体感して頂きました。


「あなたの身体は振動をどこで感じていますか?」


4.ポスター展示

   11題の研究紹介ポスターを展示し、各研究グループ・センターが日頃行っている研究の内容を紹介しました。


ポスター展示


5.おわりに

 お陰様を持ちまして、今年も一般公開を無事に終えることが出来ました。ご来場いただいた皆様方に厚く御礼申し上げます。

(人間工学研究グループ 齊藤宏之)


刊行物・報告書等 研究成果一覧