労働安全衛生総合研究所

働く人の安全に関する研究施設の公開(清瀬地区)
– 平成31年度一般公開を終えて –

 4月17日(水)の13時から17時まで、平成最後の清瀬地区の研究施設一般公開を開催しました。この一般公開は当研究所の活動を知っていただくことはもちろんですが、普段は話す機会のない皆様と研究者が交流し、どのように労働災害を防止するのかを考える場にもなっています。
 当日は458名もの多くの方々にご来場いただきました。平日にもかかわらず近隣だけでなく、かなり遠方からのご来場も多く、我々としても産業安全への関心の高さを再認識する機会となりました。ご来場下さった方々には心よりお礼申し上げます。
 今回は12件の最近の研究成果の紹介、実験デモ、展示等を行いました。当日お越しになれなかった方もいらっしゃると思いますので、それぞれの公開内容を簡単にご紹介します。

(1) 材料・新技術実験棟 500t実験室

① 『玉掛け作業の盲点 曲げ圧縮に注意!』
 危険な玉掛け作業の再現実験を行い、吊り角度により曲げ圧縮の大きさが変化し、場合によっては吊り荷が破断するかもしれないことを体感していただきました。




(2)機械安全システム実験棟 大実験室

② 『機械設備の安全対策 はさまれ、巻き込まれ、切れ、こすれの災害を防ぐには』
 機械災害防止の原則である「危険な可動部が動いている時は接近しない」ができない作業(スライサーやミキサーなどを用いた食品加工、リフターや電動ストレッチャーを用いて行う介助作業など)に対する安全制御技術をご紹介しました。




(3)共同研究実験棟

③ 『強風に対する足場の倒壊防止 足場に作用する風力の検討止』
 強風に対する足場の倒壊防止を検討するためには、風洞実験装置により足場に作用する風力を科学的に解明することが重要であることを説明しました。
 


④ 『脚立からの転落防止 姿勢の安定性を評価する』
 市販されている多くの脚立の紹介、脚立の踏みざん(ステップ)を模した足場でどれくらいバランスが崩れるのかを体験していただきました。
 


(4)建設安全実験棟 遠心模型実験室

⑤ 『小さな模型で大きな世界を再現! 遠心力載荷装置を使った建設現場の再現実験』
 この実験室では遠心力を利用して、現実の世界で起きる現象を小さい模型サイズで再現することができます。今回は掘削ロボットを使った掘削工事の再現実験や建設機械の転倒防止に関する実験について紹介しました。




(5) 電気安全実験棟

⑥ 『静電気の帯電・放電・着火実験 爆発・火災の原因としての静電気』
 スプレーからの噴出に伴って発生する静電気など、いくつかの静電気が発生する場面を再現し、放電により可燃物が着火する様子から静電気の危険性を実感していただきました。




⑦ 『粉体投入・充填時に発生する静電気放電 静電気放電を直接目で確認して、その危険性を学ぼう!』
 静電気放電による爆発や火災が問題になっている粉体空気輸送、貯蔵、および集じんなど、大量の粉体を扱う工程・装置による静電気放電の危険性と対策を解説するとともに、簡単な静電気放電の体験していただきました。




(6) 配管等爆発実験施設 中規模爆発実験室

⑧ 『ガス溶断作業における爆発・火災の危険性 作業当事者の想像を超える人的被害と経済的な損失』 
 アセチレン/酸素を使ったガス溶断の模擬実験を行い、切断の際に発生する火花粒子(スパッタ)の飛散状況と、LPガスや硬質ウレタンフォームに着火する様子をご覧いただき、いかに危険であるのかを間近で体感していただきました。




(7) 本部棟

⑨ 『火災・爆発発生の不安を少しでも減らすために! リスクアセスメントを正しく実施して、想定外の災害発生を無くしましょう』 
 火災・爆発を防止するためのリスクアセスメント等実施の必要性を解説するとともに、提案しているリスクアセスメントの進め方(技術資料)や、現在実施中のプロジェクト研究の内容について紹介しました。

⑩ 『異常反応を考慮したリスクアセスメント等の支援方策 隠れている反応危険を見つけ出す』 
 あとを絶たない物質の異常反応が原因となった爆発・火災を防止するためのリスクアセスメント、その結果に基づくリスクアセスメント等の措置の実施を的確に行うことの重要性を解説しました。

⑪ 『静電気リスクアセスメント手法 静電気着火のリスクアセスメント実施のための支援技術』 
 化学物質に対し法的にも義務となったリスクアセスメントを、静電気着火においても実施できるように開発したガイドとチェックシートの内容を中心に解説しました。





⑫ 『昔の労働安全衛生ポスター展』 
 毎年恒例のポスター展示です。昭和の安全衛生活動に使用された懐かしいポスターをご覧いただき、安全の歴史に触れていただきました。

 




 なお、当日配布したパンフレットにも公開内容の概要説明がありますので、ご来場いただけなかった方は下記のURLからPDFファイル(5,055KB)をダウンロードしてご覧ください。
https://www.jniosh.johas.go.jp/announce/2019/open2019/pdf/H31kiyose_pamphlet.pdf

おわりに


 元々が実験室という制限のあるスペース内での見学のため、ご不便をお掛けしたことを申し訳なく思っております。ご協力いただいたアンケート結果等をもとに少しでも改善できればと考えています。
 来年も同時期に開催する予定です。またのご参加を所員一同、心よりお待ちしております。

(リスク管理研究センター 上席研究員 大西 明宏)

刊行物・報告書等 研究成果一覧