過信は禁物! 静電気対策
冬になると乾燥が気になりますね。そしてドアノブに触れた瞬間などに「バチバチッ」と発生する静電気に不快な思いをする方も多いことでしょう。特に産業現場では、高分子材料などの絶縁物を広く使用することにより静電気が発生しやすく、これに起因して火災・爆発災害が発生しています。これらの静電気災害を防止するために様々な対策が行われていますが、適切な対策でなければ効果はありません。ここでは誤りやすい静電気対策の例とそれに対して留意すべき事項を3点ご紹介します。
① 粉体空気輸送設備において粉体の静電気(帯電)を除去するため、図1のように、輸送配管の投入口およびその先に金網を取り付けることがあります。これは、輸送物体の静電気防止対策にならないことがあります。むしろ、金網との摩擦により静電気(帯電)を増加させることが多いので注意が必要です。もし、異物混入の対策としてやむを得ず金網を使用する場合は必ず接地をしてください。接地をしない場合、金網から火花放電が発生する可能性が高いからです。
図1 輸送配管における誤った除電の一例
② 作業者(人体)が何らかの原因で帯電すると、人体からの放電により静電気災害に至ることがあります。作業者の静電気帯電防止のためには、静電気を逃がすことができる作業床の使用は勿論、帯電防止用靴(静電靴ともいう)や帯電防止作業服を着用することが必須です。多くの現場ではこれらの対策により、日常的に作業者が電撃を受けることがないと過信しがちです。しかし、静電気放電は、両物体の電位差(約30kV/cm)が生じると発生し、作業者が0電位(帯電していない状態)であっても周りに帯電した物体(例えば、接地不良のドラム缶)が存在すれば、帯電した物体から人体へ静電気放電が発生し、電撃を受けてしまいます(図2)。特に、生産管理上の理由から静電靴の上にシューズカバーを着用している場合、シューズカバーの絶縁性が高いと、作業者が帯電し、火花放電を発生する可能性があるので注意しなければなりません。なお、帯電防止作業服ではなく、綿製の作業服を着用する場合、冬のような低温環境下では、綿製の作業服が静電気防止対策にならないことがあるので注意が必要です。
図2 接地不良の帯電したドラム缶から人体へ静電気放電
③ 絶縁性フレキシブルコンテナ(注)(フレコンともいう)から粉体などを排出する際に、フレコンの外側の表面が高く帯電し、そこからの放電により粉じん爆発が発生する場合があります。現場では、このような事故を防止するため、外側に接地された金属のネットを被せて使用することが少なくありません。しかし、これは、作業員への電撃を防止する可能性はあるものの、帯電自体を除くという根本的な静電気対策にはならないので注意が必要です。取り扱う粉体などの静電気特性(着火性など)を把握して、必要に応じて帯電防止加工をしたフレコンを使用することをお勧めします。なお、帯電防止加工品は接地によって静電気を大地へ逃がすという方法を採用しているので、作業中には必ず接地をしてください。
最後に改めて強調すると、接地不良になった導体(金属)は静電気災害を引き起こす可能性が極めて高いため、対策の基本は接地することです。現場で静電気安全教育などを行う際に、「接地をとる」という表現が使われることがありますが、「とる」は「接地する」と「外す」という正反対の意味に受け取ることができるため、誤解を招きかねません。「接地を付ける」「接地する」のような曖昧でない表現の使用をしましょう。
(注)フレキシブルコンテナとは粉末や粒状物の荷物を保管・運搬するための袋状の包材である。