労働安全衛生総合研究所

テールゲートリフター使用時における労働災害の特徴と対策

1.はじめに


 テールゲートリフター(TGL)とは、トラック荷台の後部に袈装されている荷役省力装置のことです(写真1)。私たちはこのTGLは日頃よく見かけます。例えばコンビニエンスストアの店舗駐車場や周辺の路上などでトラック荷台から地面へ積荷を移動させる場面です。TGLで取扱う荷としては、商品などが積載されたロールボックスパレット(カゴ車)やカートラック(6輪台車)などの人力運搬機が多いですが、ガスボンベや引越し荷物などの移動にも活用されています。このようにTGLは今日の多様な荷役作業を支える装置として重宝されているのですが、その一方でTGL上のロールボックスパレット移動時にバランスを崩し、作業者が下敷きとなる死亡災害1,2)が報告されています。このように死亡災害のようにインパクトの強い情報は散見されるのですが、TGL使用に起因する労働災害の全容は分かっていませんでした。本コラムでは、筆者が当研究所のプロジェクト研究の一環としてまとめた休業4日以上の労働災害データの分析によって得られたTGL使用に起因する労働災害の特徴と対策3)についてご紹介します。



写真1 テールゲートリフター

2.対象データとデータの分析


 対象は厚生労働省がインターネット上(職場のあんぜんサイト)で公開している2011年および2012年の休業4日以上の労働災害としました。ただしインターネット上で公開されているのは、両年ともに全件から約四分の一を無作為に抽出したものに限られていますので、2011年は30,670件(全数の26.9%)、2012年は31,617件(全数の26.4%)の合計62,287件を使用しました。
 TGL起因災害の抽出の手続きとして、まず各事例の発生状況の文章に“テールゲートリフター”との記述があったもの、TGL製品名やTGLであることが類推できる用語(例えば、ゲート車)があった例を抜き出しました。ただしこれだけでは信頼性が低いので、各事例を精読してTGL起因災害として矛盾がないと判断できた例のみを抽出しました。その上で抽出したTGL起因災害の年間件数を推計するとともに業種別の発生状況や被災タイプごとの分類を試みました。


3.TGL起因災害の件数


 TGL起因災害として抽出されたのは2011年が150件(全体の0.49%)で、2012年は167件(全体の0.53%)でした。ただし前述のとおり今回の分析では両年ともに全数の26.4%〜26.9%しか用いていませんので、仮に100%存在したと仮定した場合の年間件数については、95%の確率で発生した件数のばらつき範囲(95%信頼区間)を推定しました。その結果は表1に示したとおりです。

表1 テールゲートリフター起因災害の件数


4.業種別の発生状況


 業種ごとの構成比を示したものが図1です。最も多かったのが運輸業で、両年ともに全体の8割近くを占めました。このようにTGL起因災害は運輸業に集中していましたので、運輸業のみで発生した休業4日以上の労働災害の全数をもとに、運輸業におけるTGL起因災害の発生割合を改めて算出しました。その結果、2011年が2.8%、2012年が3.9%となりましたので100件に約3〜4件に相当することが分かりました。TGL起因災害が運輸業に多かったのはトラック運転手がTGLを操作する実態を反映したと思われますので、トラック運転手を対象とした安全なTGL取扱い教育の強化が重要になることを示唆しています。


図1 業種別に見たTGL起因災害の状況(構成比)

5.被災タイプの特徴


 各事例を精読することによって導いた被災タイプは4つに分類されましたので、2011年と2012年に発生した317件をタイプ別に集計しました(図2)。TGL使用時の「作業者の転倒・転落、飛び降り」が78件(24.6%)、「荷の転倒・転落による下敷き等」が72件(22.7%)、「荷・作業者の転倒・転落による下敷き等」が56件(17.7%)となり、作業者あるいは荷が倒れた・落ちた災害が全体の65%を占めました。また、作業者の昇降時や昇降板の展開・格納時に発生した「昇降板との間にはさまれ」は65件(20.5%)ありました。


図2 TGL起因災害の被災タイプ

6.被災タイプにもとづいた対策


 作業者の転倒・転落防止に関しては、運用方法の見直しだけでなく安全柵などの設備的な対策が重要になると考えられます。日本では安全柵付きのTGLを見かけませんが、欧州では写真2のような安全柵付きタイプが一般的に市販され、実際の現場でも使用されています。私たちはこの欧州方式から学ぶことが多いように思われます。その他にもTGLの昇降板(プラットホーム)上での滑りによる転倒・転落も少なくなかったので、昇降板が濡れていた場合でも滑りにくくする防滑加工や滑りにくい作業靴(耐滑靴)を履くことが重要になると考えられました。


写真2 安全柵付きテールゲートリフター(現地名:Tail Lift)
写真提供:BAR Cargolift, ETMA (European Taillift Manufacturers Association)

 荷の転倒・転落による下敷き等に関しては、ロールボックスパレット等のキャスター付きの荷の固定が緩かった事例が多くありました。ロールボックスパレットであれば写真1のようにキャスターストッパーにしっかり当てて使用しますが、停車場所の僅かな傾きや揺れやすいプラットホームの構造、トラックのサスペンションの影響が加味されて、キャスターが容易に動いてしまう場面が多々あります。そのためロールボックスパレット側のストッパー使用が重要になります。ただしストッパーが付いていないキャスターもありますので、その場合は写真2のような安全柵を荷の支えとして活用できれば、災害防止だけでなく荷の損傷防止にもつながると思われます。
 昇降板との間にはさまれた災害事例の大半は、国内メーカーの大半が禁止している作業者がTGL昇降板に乗って移動した際に、足が荷台と昇降板との間にはさまれたものでした。欧州のTGLであるテールリフトのBSEN規格4)では、足のはさまれ保護などの諸条件を満たせば1名までなら昇降してよいと明記されています。残念ながら日本ではこの諸条件が整備されていないので、メーカー各社も作業者昇降を許容し難い状況にあると思われます。現段階で足のはさまれ防止と作業者昇降を両立する手段としては、昇降板を荷台と地面の中間に止めて、50センチ程度のステップとして移動するのがよいと思われます。

7.リーフレット『テールゲートリフターを安全に使用するために』


 このような実態を鑑みて、本年の4月に当研究所ならびに厚生労働省は、テールゲートリフター取扱い時の労働災害を防止するためにリーフレット『テールゲートリフターを安全に使用するために 2ステップで学ぶ 6基本&11場面別ルール』を作成し、公開しました。本リーフレットは前述のTGL起因災害を防止するための必須事項として、基本的な6つのルールと昇降板の位置や動作中といった使用場面別の11のルールから構成されており、ルールを守っているかを各自がチェックできるようになっていますので、災害防止に活用されることを期待しています。


『テールゲートリフターを安全に使用するために 2ステップで学ぶ 6基本&11場面別ルール』
( URL : http://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2018_01.html )


参考文献

  1. 神奈川県トラック協会: 死亡災害発生概要(陸上貨物運送事業関係), 神奈川トラック時報, 3, p18, 2011.
  2. 大阪労働局・各労働基準監督署: 平成25年度版労働災害の現況と死亡災害事例, p14, 2013.
  3. 大西明宏:テールゲートリフター使用に起因する労働災害の特徴. 人間工学, 54, 3, pp115-123, 2018.
  4. British Standard Institute: BSEN 1756-1 (Tail lifts) Part 1: Tail lifts for goods, pp1-72, United Kingdom, 2008.

(リスク管理研究センター  上席研究員 大西明宏)

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