労働安全衛生総合研究所

澤田晋一国際情報・研究振興センター長が
中央労働災害防止協会平成23年度緑十字賞を受賞

=この度は、緑十字賞受賞、おめでとうございます。なんでも、「長年にわたり我が国の産業安全又は労働衛生の推進向上に尽くし、顕著な功績が認められる個人及び職域グループ」に贈られる賞とのことですが・・

[澤田] 知らせを聞いた時は、え?なんで自分が?それはきっと何かの間違いで賞、と思いましたが、僭越至極なことです。研究所(旧産業医学総合研究所)入所当時の所長でいらした坂部弘之・輿重治両先生から「本物の労働衛生(エイセイ)学者にならねばいかん!」と叱咤激励されました。「労働似非(エセ)学者になるな!」ということだと理解しました。それから三十年余り、多くの恩師や先輩・同僚に支えられながら、笠地蔵のように風雪に耐え、夏の猛暑にもめげず、ドジョウのように愚直に努めてまいりました。

=本物の労働衛生学とは?

[澤田] 技術の重みがわかった上で、現場の視点に立ってサイエンスができるということかと。

=ほほう、ご専門は温熱生理学ですね。現場で検証された結果を、職場の熱中症予防対策に関する行政の通達(平成8年、17年、21年)にも活かされたということでしょうか。

[澤田] 今はそれを更に、ISO(国際標準化機構)の基準にも活かそうと準備中です。

=現在はどんなお仕事を?

[澤田] サーマルマネキンという人体を模擬した世界有数の発汗歩行人形を用いて、防護服やヘルメット、作業服等の伝熱特性の評価をしたり、作業時間あたりの水分補給量について、どのくらいが適切か、作業強度、作業服、WBGT(暑さ指数)などの暑熱作業条件別に理論と実験により検討しています。
 また新たな緊急要請課題として、今年から原発復旧作業時の熱中症予防方策や夏期節電時のオフィス温熱環境評価の研究にも、取り組んでいます。

=これから寒くなりますが、寒冷のほうではいかがですか?

[澤田] 実験では、日本人は欧米人よりも、寒さ刺激に敏感に反応するらしいことがわかりました。また、主観的快不快感や温冷感が低体温や凍傷のリスクの鋭敏な指標にならないことも実証しました。こちらの方は、現場への応用は、まだこれからです。

=表彰式にはスーツで出席されたのですか?

[澤田] ははは、普段、スーツは着ません。とりあえず研究者は外見でなく中身だと思っているので。もっとも、自慢できる中身があるわけではありませんが・・今までスーツを着たのは、封鎖解除まもない東大安田講堂での招待講演と、ジュネーブでのWHO会議と、さだまさしのディナーショーと・・・今回の全国産業安全衛生大会での表彰式で4度目です。

=着心地はいかがでしたか?

[澤田] 表彰式の後、いきなりラジオ体操が始まり、いわれるままに上着を脱いで、イチ、ニ、イチ、ニと・・気がついたら、周りの表彰者はみんな長袖のワイシャツ。半袖姿は自分だけで、ちょっと恥ずかしかったなあ(笑)。10月とはいえ、けっこう暑い日だったし、上着を着ていたので、いいかと思ったんですけど・・

=研究者はやはり中身が問題だったというわけですね。最後に後進へ一言どうぞ。

[澤田] なりふりかまわず亀のようにのらりくらりと、しかし着実にやっていれば、見る人は見てくれていて、いつかはウサギに追いつけるかもしれません。もっともウサギが昼寝をしてくれていれば、の話ですが。

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