作業ストレスとうまく付き合っていくには
近年、職場での強い不安・悩み・ストレスがある労働者の割合は約60%に達しています。これらの労働者のうち、仕事の質の問題がストレスになっている人は35%、仕事の量の問題がストレスになっている人は31%です(労働者健康状況調査、平成19年度)。このことから、いかに作業ストレスを軽減するかが重要な課題となっているかがわかります。
それでは、そもそも「ストレス」とは何でしょうか?ストレスという言葉を聞くと、悪いイメージしか浮かばないかもしれません。しかし一概にそうとは言えません。ストレスとは外から力が加えられた時に生体に生じる「ひずみ」を意味します。生体側の反応をストレス、その反応を引き起こす刺激をストレッサーと呼びますが、日常では、この二つの言葉は厳密には区別されずに使用されています。ここでは「ストレス」を「ストレッサー」の意味も含めて使っていきます。
ストレスと作業パフォーマンスの間には、逆U字曲線の関係が存在すると言われています。仕事の生産性や作業効率を高めるためには、ストレスがまったくない状態ではダメですし、逆にあり過ぎてもうまくいきません。逆U字曲線の真ん中、つまり適度なストレスがあることが私達は高いパフォーマンスを発揮できるということを理解する必要があります。
一方、私達の体はストレスに対してどんな反応を示すのでしょうか?ストレス反応は意識レベルで感じるもの(筋肉痛、目の疲れなど)と感じないもの(自律神経系の反応、ホルモンの分泌など)があります。特に意識レベルで感じない心臓血管系の過剰反応が慢性化すると、将来的に、高血圧症、狭心症、心筋梗塞などの発症リスクが増加することが、これまでに報告されています(Rose et al., 1978など)。厚生労働省によると、職場の定期健康診断の血圧の有所見率は、平成11年の10%から平成21年は14%まで増加しています。さらに、脳・心臓疾患(うち過労死含む)に係る労働災害の認定件数は、平成11年の81件から平成21年は293件まで増加しています。
これらの増加の原因のすべてがストレスに起因するものではありませんが、このような作業関連の心臓血管疾病リスク及び労働災害の増加を防ぐ対策の一つとして、作業ストレスによる心臓血管系への負担を軽減する方策を探ることが重要になります。
これまでの研究によれば、作業ストレスに対する心臓血管系の反応は個人差が大きく、同じ作業をしていても、血圧の上昇が大きい人と小さい人が存在します。また、血圧の上昇が同じであっても、反応のメカニズムが異なり、主に心臓反応(心臓から送り出される血液量の増加)を示す人と血管反応(血管の収縮などを含めた末梢血管抵抗の増加)を示す人が存在します。これらの異なる反応特性も疾病の発症リスクに影響を及ぼすことが多くの先行研究で報告されています。それに対処するため、きめの細かい作業時間管理が必要となってきます。例えば、厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によれば、1時間連続作業の場合は1?2回の小休止を提案していますが、各労働者のストレス反応特性にあったタイミングで個別に対応できれば、より効果的に負担軽減につながると予想されます。
このように作業ストレスと上手く付き合っていくには、ストレスをすべてなくすのではなく、ストレスそのものと私達の体のストレス反応の特徴を理解し、それに基づいて適切な対応をすることが必要です。そうすれば、作業パフォーマンスを低下させることなく、労働者の身体負担を軽減し、快適な職場作りが実現できていくと考えられます。
私は今、作業ストレスによる心臓血管系への負担に関する研究を行っています。例えば、多様な作業・休息の組み合わせが、身体負担やその軽減に及ぼす影響について、コンピュータ作業中の血圧上昇などの心臓血管系の反応を中心に、作業中の覚醒水準の変化などの中枢神経系の反応についても調べています。将来的には、各労働者のストレス反応特性を考慮し、個別に対応できる作業時間管理を提案するための基礎データを提供したいと考えています。
それでは、そもそも「ストレス」とは何でしょうか?ストレスという言葉を聞くと、悪いイメージしか浮かばないかもしれません。しかし一概にそうとは言えません。ストレスとは外から力が加えられた時に生体に生じる「ひずみ」を意味します。生体側の反応をストレス、その反応を引き起こす刺激をストレッサーと呼びますが、日常では、この二つの言葉は厳密には区別されずに使用されています。ここでは「ストレス」を「ストレッサー」の意味も含めて使っていきます。
ストレスと作業パフォーマンスの間には、逆U字曲線の関係が存在すると言われています。仕事の生産性や作業効率を高めるためには、ストレスがまったくない状態ではダメですし、逆にあり過ぎてもうまくいきません。逆U字曲線の真ん中、つまり適度なストレスがあることが私達は高いパフォーマンスを発揮できるということを理解する必要があります。
一方、私達の体はストレスに対してどんな反応を示すのでしょうか?ストレス反応は意識レベルで感じるもの(筋肉痛、目の疲れなど)と感じないもの(自律神経系の反応、ホルモンの分泌など)があります。特に意識レベルで感じない心臓血管系の過剰反応が慢性化すると、将来的に、高血圧症、狭心症、心筋梗塞などの発症リスクが増加することが、これまでに報告されています(Rose et al., 1978など)。厚生労働省によると、職場の定期健康診断の血圧の有所見率は、平成11年の10%から平成21年は14%まで増加しています。さらに、脳・心臓疾患(うち過労死含む)に係る労働災害の認定件数は、平成11年の81件から平成21年は293件まで増加しています。
これらの増加の原因のすべてがストレスに起因するものではありませんが、このような作業関連の心臓血管疾病リスク及び労働災害の増加を防ぐ対策の一つとして、作業ストレスによる心臓血管系への負担を軽減する方策を探ることが重要になります。
これまでの研究によれば、作業ストレスに対する心臓血管系の反応は個人差が大きく、同じ作業をしていても、血圧の上昇が大きい人と小さい人が存在します。また、血圧の上昇が同じであっても、反応のメカニズムが異なり、主に心臓反応(心臓から送り出される血液量の増加)を示す人と血管反応(血管の収縮などを含めた末梢血管抵抗の増加)を示す人が存在します。これらの異なる反応特性も疾病の発症リスクに影響を及ぼすことが多くの先行研究で報告されています。それに対処するため、きめの細かい作業時間管理が必要となってきます。例えば、厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によれば、1時間連続作業の場合は1?2回の小休止を提案していますが、各労働者のストレス反応特性にあったタイミングで個別に対応できれば、より効果的に負担軽減につながると予想されます。
このように作業ストレスと上手く付き合っていくには、ストレスをすべてなくすのではなく、ストレスそのものと私達の体のストレス反応の特徴を理解し、それに基づいて適切な対応をすることが必要です。そうすれば、作業パフォーマンスを低下させることなく、労働者の身体負担を軽減し、快適な職場作りが実現できていくと考えられます。
私は今、作業ストレスによる心臓血管系への負担に関する研究を行っています。例えば、多様な作業・休息の組み合わせが、身体負担やその軽減に及ぼす影響について、コンピュータ作業中の血圧上昇などの心臓血管系の反応を中心に、作業中の覚醒水準の変化などの中枢神経系の反応についても調べています。将来的には、各労働者のストレス反応特性を考慮し、個別に対応できる作業時間管理を提案するための基礎データを提供したいと考えています。
(有害性評価研究グループ 任期付研究員 劉欣欣[リュウシンシン])