労働安全衛生総合研究所

新人紹介

環境計測管理研究グループ 中村 憲司


木村新太

 平成23年4月1日付けで任期付研究員として環境計測管理研究グループに着任致しました中村と申します。早稲田大学理工学部環境資源工学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻に進学し、博士(理学)の学位を取得致しました。大学院時代は東京大学先端科学技術研究センターにおいて一般大気中の微量成分の動態に関する研究をしており、特に光化学的に二次生成する物質であるオゾンの生成過程や長距離輸送等を対象として、測定器開発、地上および航空機による実大気測定、シミュレーションを利用したデータ解析等を行ってきました。学位取得後、労働衛生の研究に携わることとなり、財団法人労働科学研究所を経て、この3月まで早稲田大学理工学術院において研究を行ってまいりました。労働衛生の分野では、主に石綿等の鉱物性粉じんの測定や作業環境管理に関する研究を行っております。これまでは主に、実際に現場測定を行う際に起こり得る問題点や作業者の負担を考慮した最適な測定方法の検討や、その方法を用いて様々な作業現場の実態調査を行ってきました。
 4月の着任以降は、空気中の石綿の測定方法の1つである位相差・分散顕微鏡法の改善に向けた研究を行うことを計画しています。光学顕微鏡による石綿の測定方法には、他に位相差顕微鏡法、偏光顕微鏡法等がありますが、どの方法も一長一短であります。現在の標準的な測定方法である位相差顕微鏡法と比較すると、位相差・分散顕微鏡法には屈折率を利用して粒子の同定が可能であるという利点がありますが、一方で、微細な繊維状粒子の検出力が劣るという問題を抱えております。現在のところ、原因は明らかではありませんが、この点を改良することで、他の光学顕微鏡法よりも優れた測定方法となる見込みがあると考えております。これまでに検討してきた結果から、光学系の改善により検出力が向上する可能性があります。まずは問題点を正確に把握し、どのような改善が適当かを示すための研究に取り組んでいきます。また、東日本大震災においては被災地での石綿の飛散が懸念されており、現在、被災地の調査に参加させていただいております。微力ながら復興の一助になるよう精一杯取り組んでいきたいと思います。
 私は大学院修士課程から現在までの研究を通して、実態の把握のために現場において測定を行うということの重要性を学んできました。これらの経験を活かして、現場が抱えている問題の解決に貢献できるように努力していきたいと思います。至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆様より御指導、御高配を賜りますよう、お願い申し上げます。

刊行物・報告書等 研究成果一覧