労働安全衛生総合研究所

技術指針 TR-No.37 の抄録

安全帯使用指針

TR-No.37

まえがき

 当研究所が昭和52年に発表した安全帯に関しての構造指針及び使用指針は、墜落災害防止のために必要となる安全帯の安全性に関する指針としてユーザ、メーカ及び関係各方面に広く活用されてきたところである。

 しかし、その後の技術の進歩等により、安全帯を取り巻く環境は大きな変化が見られる。すなわち、新しい材料の活用、新しい安全帯の開発、安全帯以外の墜落防護器具の開発等による従来の指針の枠を超えた安全器具の出現や、ISO 9000や14000に代表されるような技術のグローバル化に伴う国際整合性の要請である。そのため、当研究所では、平成11年に上記の構造指針の改訂を行ない、新しい安全帯や安全帯と関連の深い墜落防護器具をも含み、また国際整合性にも配慮した安全帯構造指針として公表した。

 同構造指針の改訂においては、近年の規格の大勢にならい、新材料の使用を妨げないように具体的な材料の指定を廃止した。それに伴い、耐用年数の問題が従来以上に重要となり、保守・点検の重要性が増加した。また、同構造指針においては新しい構造の安全帯や安全帯関連器具を導入したので、それらの器具に固有な使用上の注意点を明確にする必要が生じた。さらに、この構造指針を元に平成13年4月に厚生労働省の「安全帯の規格」が改訂されたため、新しい安全帯の使用が促進される状況にある。このような状況に対処するため、(社)産業安全技術協会のご協力のもとに、安全帯使用指針改訂委員会を設け、数回におよぶ委員会の審議の結果、改訂原案の成案を得るに至り、それをもとに、ここに産業安全研究所技術指針として安全帯使用指針を公表するものである。

 今回の改訂にあたり特に問題となった点には、耐用年数の他に、厚生労働省の「安全帯の規格」との関係がある。厚生労働省の「安全帯の規格」においては、規制緩和の観点から適用範囲を広げることを避けるため、構造指針にある安全帯関連器具等を含んでいない。これについては、解説に従来の構造指針、新しい構造指針、厚生労働省の規格の関係を表にして、新旧の構造指針及び厚生労働省の規格との関係も明示している。

 今回の使用指針で大きく変わった点は、ハーネス型の安全帯に関する項目の追加、安全帯関連器具に関する項目の追加、廃棄基準の追加等である。また、耐用年数との関連で、具体的な点検箇所、点検方法とその判断基準を参考資料として例示した。

 墜落災害は、死亡危険性が非常に高い災害である。その中には、安全帯を使用していたが、その使用方法が不適切であったり、劣化した安全帯を使用していた例も含まれる。本指針の活用によって、安全帯及び安全帯関連器具の正しい使用法が普及し、墜落災害防止に役立つことを期待するものである。

 最後に、本指針の改訂原案作成にあたり、多大なご協力を賜った(社)産業安全技術協会及び安全帯使用指針改訂委員会の委員の各位に対し、深く感謝の意を表します。


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