労働安全衛生総合研究所

技術指針 TR-78 の抄録

静電気安全指針

TR-78-1

 昨今における高分子化学の発達,生産工程の近代化等に伴い,工場・事業場では静電気が原因となって各種の災害が発生している。また,静電気が帯電したための生産障害もしばしば耳にするところである。

 このように静電気は,爆発・火災や各種生産障害の原因になるため,静電気対策は産業安全の分野でも比較的古くから取り組まれてきた課題の一つである。しかしながら,静電気対策については現在においても国内国外を問わず,これを体系的にまとめたものが少なく,産業災害防止の面で静電気対策がその障壁となったり盲点となったりすることがしばしばある。

 このような背景のもとに,静電気災障害を防止することを目的とした静電気安全指針をここにまとめた次第である。本指針は,当研究所における過去の研究成果及び内外における研究成果等を基礎にすると共に,社団法人産業安全技術協会の積極的な協力を得てまとめたもので,静電気災障害防止に関心の深い方々から成る静電気研究委員会を協会に設置していただき,この委員会において審議を重ねていただいたのである。

 本指針は,この委員会の審議に基づき,静電気災害防止対策に関連した事項を本編,附属書及び技術資料の3編にまとめ,さらにこれら3編を補足するために,応用編と参考資料の2編を設けた。これらの内容を要約すると,

  1. 本編は,基本的な方法論を骨子として作成し,それらの対策の基本的考え方を明らかにしている。また,それらの対策を現場に徹底させるために必要な安全管理面の体系化についても触れている。
  2. 附属書は,静電気災害防止対策として必要な用具,器具類の選定に役立つような主要なものの構造基準をまとめたもので,それらの性能,試験方法等を示している。
  3. 技術資料は,静電気対策にかかわる静電気の測定方法をまとめたもので,測定対象別にその方法を示している。
  4. 応用編は,現場で静電気対策を十分に実施するための安全管理規程,設備基準作業安全基準等の具体例を示し,本編を基本にして各事業場の実態に即した静電気安全管理体制の整備に役立つように配慮している。
  5. 参考資料は,静電気対策を実施する上で必要になるデータ等を示している。

 以上のように,本指針は静電気対策の方法を中心にまとめ,災害防止を自主的に推進する場合の技術資料として活用していただくために,当研究所の技術指針として示した次第である。本指針が静電気災害防止対策推進の一助となれば幸いである。また本指針の不備な点については,今後関係者の協力を得て逐次より良いものへ改訂整備をはかってゆく所存である。

 最後に,本指針をまとめるにあたり絶大なるご協力をいただいた上智大学大滝善太郎教授並びに委員各位に対し深く感謝の意を表する。

昭和53年10月20日  労働省産業安全研究所  所長  川口 邦供


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