労働安全衛生総合研究所

安全資料 SD-No.24 の抄録

ICTを活用した安全衛生管理システム構築の手引き

SD-No.24
梅崎重夫,濱島京子

 近年、雇用の流動化や就業形態の多様化、設備の自動化・省力化・集約化の進展、アウトソーシングの進展等による混在作業の増加等、労働者を取り巻く状況は大きな変化を見せている。また、不況時の新規採用人員の絞り込み等による若手人材の不足に加えて団塊世代の大量退職に起因して、人材を補うために経験年数の短い労働者を多数、作業に従事させざるを得ない状況となっている。

 これらにより、労働の現場において、1.現場の実情を踏まえた安全衛生管理のノウハウの消失、2.労働者の熟練度の相対的な低下、3.体系的な教育の困難化、4.一人作業の増加、5.担当範囲の拡大・多能工化、6.技術のブラックボックス化、7.危険有害情報の伝達・共有の困難化など、多様な問題による労働安全衛生水準の低下が懸念されるところであり、このような問題を背景とした労働災害の発生も懸念されるところである。

 これらの問題に対応するために、近年進歩の著しい携帯情報端末、ICタグ、データベースシステムなどの「ITを活用した安全管理手法の開発」が厚生労働省により計画され、独立行政法人労働安全衛生総合研究所(以下「安衛研」と呼ぶ)と社団法人日本鉄鋼連盟の連携によって平成18年度及び19年度に進められた。具体的には、安衛研内に学識経験者や業界団体の専門家等による委員会を設置し、当該委員会でITを活用した安全衛生管理システムの設計ガイドの開発を行い、日本鉄鋼連盟では設計ガイドに基づいて構築したシステムの実証試験を鉄鋼現場で進めた。

 平成20年度は、以上の成果を基に、安衛研内に業界団体の専門家等による委員会を設置し、業種・事業場規模・作業態様等の違いを考慮しつつ、ITを活用した安全衛生管理手法の普及促進に向けた業種横断的な手引き、パンフレット等の検討を行なった。具体的には、当該委員会で安衛研が提案した「ITを活用した安全衛生管理システム構築の手引き」に対する意見聴取を図るとともに、日本鉄鋼連盟では現場で利用しやすく、かつ、分かりやすいを主眼に、ITを活用した安全管理手法の普及促進に使用する業種横断的なパンフレットの作成を行なった。

 本報告書は、以上の検討の中で、安衛研が専門家を交えた委員会での討議を得て開発した「ITを活用した安全衛生管理システム構築の手引き」及び「ITを活用した安全衛生に関するシステム設計ガイド」を取りまとめたものである。なお、“設計ガイド”を現在は“導入ガイド”と呼んでいる。


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