安全資料 SD-74 の抄録
セーフ・ギャップについて
SD-74 |
鶴見平三郎 |
まえがき 防爆電気機器の防爆施設上の重要性については,周知の事実であり,今さら多言を要しない。この重要な防爆電気機器のうち耐圧防爆構造の基礎となるものは所謂雰囲気ガスに火炎逸走を生ぜしめないスキの値であろう。この値はセーフ・ギャップ(Safe Gap)と称せられており,ドイツにおいてはスパルト・バイテ(Spaltweite)といわれている。そしてこのうち最も重要な数値は,その対象となるガスおよび蒸気に固有な値である実験的最大セーフ・ギャップ(Maximum experimental safe gap,以下M.E.S.G.という。)とこのM.E.S.G.の値に対して統計的な処理を行なった統計的最大セーフ・ギャップ(Statistical maximum safe gap,以下S.M.S.G.という。)である。 すなわちこのセーフ・ギャツプの値は,耐圧防爆構造の電気機器を設計する際に知らなけれはならない数値の一つとして応用工学的にみて極めて意義深いものがあろう。 またこの値の限界値は,可燃性ガスおよび蒸気の分類に用いられるなど,安全工学上の一定数として広く用いられており,燃焼学的にみてもセーフ・ギャップによるところの火炎の消炎の挙動は,極めて興味深いものがあるといわなけれはならない。そしてこれらの事情は,燃焼学上権威のある学界誌の一つであるといわれている.”Combustion and Flame”にも,しばしばセーフ・ギャップをテーマとする論文が集録されていることからも裏書きされよう。 この資料は,このセーフ・ギャップの性格を実用工学的な観点から,各項目毎に浮彫りするように努めたものであり,やや難解と思われるセーフ・ギャップの消炎理論などについては,一切ふれないこととし,これについては別の報文にゆずることとした。 この中に引用した文献は,筆者が,昭和47年度在外研究員として,イギリスの国立鉱山保安研究所および西ドイツ国立物理工学研究所に留学中に人手したものを中心として取りまとめたものであり,筆者の在外研究報告の一部をなすものである。 |