労働安全衛生総合研究所

特別研究報告 SRR-No.48 の抄録

  1. 労働者の疲労回復を促進する対策に関する研究

労働者の疲労回復を促進する対策に関する研究

研究全体の概要

SRR-No48-1-0
高橋正也,久保智英,井澤修平,三木圭一,原谷隆史,土屋政雄,倉林るみい,島津明人,田中克俊,池田大樹
 退勤から次の出勤まで一定時間の休息を確保する勤務間インターバルは過重労働者の健康対策として有望視されている。その実証に向けて、本研究は①勤務間インターバルからみた労働者の疲労回復、②勤務間インターバルと疲労回復に関する縦断研究に取り組んだ。①は常日勤者(IT 労働者)、夜勤・交代勤務者(病院看護師)を対象とし、約1 ヶ月間の観察調査を行った。常日勤者の研究から、勤務間インターバルが長いほど、拡張期血圧が低いこと、睡眠時間が長いこと、疲労感が少なく、勤務時間外における仕事との心理的距離は取れていることが明らかとなった。夜勤・交代勤務者の研究から、長日勤—長日勤および夜勤—夜勤のシフト組合せパターンは、他のパターンと比べて勤務間インターバルが短い傾向にあり、反応時間検査成績も低下する傾向が示された。②は情報技術業関連労働者と製造・情報技術業事業場労働者について、年に1 回、のべ3 回の追跡調査を行った。勤務間インターバルが11 時間未満となる月間日数が1 回目調査から2 回目調査とも常に多い(6 日以上)群では6 時間未満となる短時間睡眠が多かった。通勤時間の長い(1 時間以上)群ではさらに起床時疲労感も増加した。情報技術業関連労働者では、1 回目調査から2 回目調査にかけて11 時間未満インターバルの月間日数が増えた群だけでなく、減った群についても、3 回目調査時に起床時疲労感が増加した。今回の知見に基づくと、十分な勤務間インターバルによって睡眠に費やす時間は増加し、それに伴って疲労回復も促進されることが示唆された。

1 ヶ月間の連続観察調査による勤務間インターバルと疲労回復—IT 労働者と交代勤務看護師における検討—

SRR-No48-1-1
久保 智英,井澤 修平,三木 圭一,土屋 政雄,高橋 正也,池田 大樹
 本研究は勤務間インターバルと労働者の疲労回復等の健康指標との関連を明らかにするために、常日勤者並びに夜勤・交代勤務者を対象に約1 ヶ月間の観察調査を実施した。常日勤者の研究ではIT 企業に勤める労働者が、夜勤・交代勤務者の研究では大学病院に勤める看護師がそれぞれ参加した。約1 ヶ月間の観察期間には、本研究のために独自開発した疲労アプリを用いて、労働時間、勤務間インターバル、疲労、勤務時間外における仕事との心理的距離等を測定した。睡眠は腕時計型睡眠計を用いて客観的に評価した。職場における安静時血圧等も測定した。常日勤者のデータから、勤務間インターバルが長いほど、拡張期血圧が低いこと、睡眠時間が長いこと、起床時に前日の疲労が残っておらず、勤務時間外における仕事との心理的距離は取れていることが明らかとなった。また夜勤・交代勤務者のデータから、長日勤—長日勤および夜勤—夜勤のシフト組合せパターンは、他のパターンと比べて勤務間インターバルが短い傾向にあり、疲労を反映する反応時間検査成績は悪化する傾向が示された。これらの結果から、勤務間インターバルの確保は労働者の疲労回復につながる可能性が示唆された。
キーワード:勤務間インターバル,疲労,睡眠

勤務間インターバルと疲労回復に関する縦断研究

SRR-No48-1-2
高橋 正也,久保 智英,井澤 修平,三木 圭一,原谷 隆史,土屋 政雄,倉林 るみい,島津 明人,田中 克俊,池田 大樹
 勤務間インターバルと疲労回復に関する長期的な関連を二つの労働者集団(情報技術業関連労働者、製造・情報技術業事業場労働者)で検証した。両集団とも年に1 回、のべ3 回の追跡調査を行った。疲労や疲労回復に関連する指標として、睡眠の状況を取り扱った。勤務間インターバルが11 時間未満となる月間日数に関して1 回目調査から2 回目調査への変化に着目したところ、両回とも常に多い(6 日以上)群では睡眠6 時間未満となる短時間睡眠が多かった。通勤時間の長い(1 時間以上)群では、さらに起床時疲労感も多かった。情報技術業関連労働者において、11 時間未満インターバル月間日数の1 回目調査から2 回目調査への変化に着目したところ、両回とも11 時間未満インターバル月間回数が0 日の群と比べて、11 時間未満インターバルが増えた群だけでなく(調整済みオッズ比1.87、95%信頼区間0.91-3.87)、減った群においても(2.07, 0.95-4.51)、3 回目調査時に起床時疲労感が増加した。今回の知見に基づけば、勤務間インターバルが保障されると、睡眠に費やす時間は増え、それに伴って疲労回復も促されると期待できる。
キーワード:過重労働対策,働き方改革,休み方改革,休息,睡眠


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