労働安全衛生総合研究所

研究報告 RR-27 の抄録

トンネル建設工事における労働災害の分析(3)

RR-27-1
前郁夫,花安繁郎,堀井宣幸
 災害度数率および強度率の極めて高いトンネル工事における災害の実態を把握するために,幾つかの観点から調査・分析を行なった。対象としたトンネルは,山陽新幹線II期工事のうち,広島・山口県内で建設されたものである。(86トンネル,75工区,延長159km,災害数1931)今回行なった分析の主な点は,
  1. 災害発生数および工事関連要素間の基本的な相関関係
  2. 2種類の災害発生率の分布特性および,災害発生率と工事関連要素との関連
  3. 災害発生率と災害発生数との関連について
  4. 災害強度特性(労働損失日数)の分布と工事関連要素との関係
  5. 災害発生率の確率論的検討
などである。(図13,表4,参10)

自然発火試験装置の構造と性能

RR-27-2
琴寄崇,内藤道夫
 PID–SCR温度制御技術を応用して新式の断熱型自然発火試験装置を製作した。この装置の最低発熱検出限界は55μWである。この装置は,少量の試料を用いて再現性良く,各種物質の自然発火性および温度,共存物質や雰囲気がそれに及ぼす効果などを研究するのに有用である。(図13,写1,表1,参10)

階段・通路の安全性に関する研究(第2報) –階段昇降動作の基礎的性格–

RR-27-3
永田久雄,木下鈞一
 階段災害は,滑り,つまずき,踏み誤りのいずれかによって起っていると考えられる。今回の報告書ではこれらの要因と関連のある次の値を実験で得た。床反力値,靴裏接地割合,靴裏接地角度,路面先端を靴先端・後端が通過する時の最短距離などである。路面と蹴上との組み合わせを4組,被験者は男子4名,女子2名を実験変数として選んだ。特に,女子については履物の違いによる実験を行なった。
 実験結果から判断して,降りる時の安全な歩行は,階段寸法と歩行速度に密接に関連している。ハイヒールを履いた被験者は,降りる時に足首を充分に回転させて接地することができないために,踏面に足が接地する時の衝撃を柔らげることができないように思われる。(図25,表5,写真4,参10)

人工指の試作研究(第3報) –多関節人工指の角度及びにぎり圧の制御について–

RR-27-4
杉本旭,近藤太二,深谷潔
 本研究ではマニピュレータの把持機構として,多関節人工指の開発及びその角度,にぎり圧の制御に関する研究を行なった。
 人工指は人間の母指,示指,中指に対応する3本指構成とし,9自由度を持たせている。人工指は人間の指の約1.4倍の大きさであり,制御装置の小型化をはかるため,電気粘性流体駆動方式を採用している。
 その結果,角度制御においては誤差1%以内に,また,にぎり圧制御においては誤差4%以内で制御可能であることが確認された。(図11,表2,写真5,参考文献3)

高炭素鋼の疲労き裂伝ぱ速度に及ぼす金属組織の影響

RR-27-5
橘内良雄
 金属組織を変えた高炭素鋼を用いて,疲労き裂の伝ぱ速度に及ぼす微視的破壊機構の影響について調べた。その結果,層状セメンタイト組織材の伝ぱ速度は球状組織のそれよりも増加していたが,これはストライエーションの他に微視へき開が介在するためである。なお,ストライエーション形成機構によってき裂の伝ぱが支配されるときには,伝ぱ速度は組織の影響を受けないことが分かった。球状セメンタイト組織において,き裂の伝ぱが組織敏感から不敏感への遷移は,亜粒界直径に対する繰返し塑性域の比がほぼ10に達すると生じることが判明した。(表4,図19,文献25)


刊行物・報告書等 研究成果一覧