労働安全衛生総合研究所

研究報告 RR-24 の抄録

プロパン–水素–空気系混合ガスを対象とする実験的セーフ・ギャップに関する研究

RR-24-1
鶴見平三郎
 25㎜のフランジを有する環状の標準容器を用いて実験的セーフ・ギャップを測定した。この実験のパラメータは,プロパン–水素–空気系混合ガスの濃度とギャップの寸度である。測定容器は,ステンレス製で内容積20㏄であり,点火源としては,電気火花を用いた。そして内部の火炎が外部に伝ぱしたか否かの判定には,イオン・プローブを使用した。
 研究の結果の概要は,つぎのとおりである。
  1. 実験的セーフ・ギャップに対するこの混合ガス中のプロパンの濃度の依存性が顕著である。
  2. M.E.S.G.は,第6図にしめすように,この混合ガスの化学当量濃度比 0.85 の濃度のガスにおいて測定された。
  3. M.E.S.G.と化学当量濃度におけるセーフ・ギャップの寸度の差は,0.09 ㎜ である。(参考文献10,写真3,図9,表1)

電子線照射ポリエチレンの燃焼性に関する研究(第2報) –熱(酸化)分解ガスクロマトグラフィー–

RR-24-2
森崎繁
 電子線で架橋させたポリエチレンを空気中又は窒素中で分解させ,発生してくるガスをガスクロマトグラフ及び質量分析計で同定,定量した。空気中で酸化分解させて発生した CO 及び CO2 の量から,低温領域における活性化エネルギーを求め,電子線照射したポリエチレンは,その値が低くなることを認めた。空気中又は窒素中において,高温領域で発生してくる炭化水素及びカルポニル化合物の量から,電子線照射ポリエチレンは,未照射のものより不安定であるが,燃焼の面からみれば,発火しにくく難燃化されていると考えられる。(図11,表1,参10)

産業災害の数量モデル化 –エントロピーの概念を用いた属性の多変量解析法による危険性評価とその事例研究–

RR-24-3
佐藤吉信,近藤太二,粂川壮一,杉本旭,前郁夫,山野英記
 統計量が名義尺度で与えられている災害事故統計調査に基づいてシステムの危険性を評価する多変量解析としてのデータ処理法が研究された。
 これを用いて研削砥石破壊事故について事例研究を行った。その結果,研削砥石が破壊した時の危険性についてある程度まで定量的に評価可能となった。(表10,図6,参6)

可燃性粉体層のくすぶり温度

RR-24-4
松田東栄,内藤道夫
 高温加熱表面上に沈降堆潰した可燃性粉体層の発火燃焼危険性に関して,直径約18cmの加熱円板装置によって,くすぶり温度を実験的に検討した。
 その結果,くすぶり燃焼に到る時間とくすぶり温度の関係はアーレニウス型の関係で表示され,くすぶり燃焼には熱分解生成物である炭素残渣の表面燃焼を伴うものと,伴わないものが観察された。その他,くすぶり温度の測定法に関して試料サイズの影響などを調べた。試料は,大豆カス,同タンパク,コーンファイバー,ナタネ粕,ココア・ハスクなどであった。(写真1,図17,参14)

火炎防止器に関する研究(第4報) –金網の消炎能力に影響する因子(1)–

RR-24-5
林年宏
 金網を消炎素子とする火炎防止器の設計および試験方法についてのデータをえるため,60–120メッシュのステンレス金網を重ねた場合に対して,消炎能力に影響する2,3の因子について検討した。実験は1インチ短管中で初圧 2 ㎏/㎠ (G) までの水素–空気混合ガス(10–60 vol.%)について行ない,金網の消炎能力の尺度は,密閉管中で火炎が阻止される限界の混合ガス初圧とした。この結果,金網の消炎能力は(メッシュ数とは無関係に)圧損に比例することが示された。また,金網枚数を増しても消炎能力には限度のあることがわかったほか,ガス濃度,金網の重ね方や変形が消炎能力に及ぼす影響について知見をえた。(表4,図6,参3)

火炎防止器に関する研究(第5報)–金網の消炎能力に影響する因子(2)–

RR-24-6
林年宏
 金網を消炎素子とする火炎防止器の設計および試験の方法に関するデータをえるため,60–120メッシュのステンレス金網を重ねた場合の消炎能力に影響する因子について検討した。実験は1インチ管中でのアセチレン–空気の爆発火炎について行ない,混合ガスの濃度,金網を重ね合せるときの離隔距離,爆発の生ずる側の管長および点火位置,爆発火炎から保護されるべき空間の大きさなどが,金網による消炎におよぼす影響について明らかにした。これらの結果は,爆発実験にもとづく火炎防止器の設計に際しての安全率のとり方や,実際の装置を用いての火炎防止器の試験が不可能なときの試験の方法を考える際に有用となろう。(図9,参1)

人工環境下における電気設備の安全化に関する研究(第2報) –低圧誘導回路の開閉火花による可燃性固体の着火限界–

RR-24-7
田中隆二,市川健二
 過剰酸素ふん囲気中の可燃性固体が,電気火花によって着火しえないような本質安全回路の設計基準を求めるために,低圧誘導回路の最小着火電流を測定した。
 可燃性固体として用いた試料は,和紙,綿布及び塩ビのシートで,ふん囲気としては100%酸素のほかに,O2 / N2, O2 / He の混合ガスを用い,その気圧及び酸素濃度を変化させた。気圧は大気圧以上 1.3 MPa (絶対気圧)までの範囲である。
 試料間の差,気圧の影響,酸素濃度の影響のほか,回路インダクタンスの影響についても調べた結果,誘導回路(最大インダクタンス 1,000 mH )火花による可燃性固体の着火限界が明らかとなった。(表2,図7,参8)

人工指の試作研究(第2報) –イオン交換樹脂分散系によるウインズロ効果–

RR-24-8
杉本旭,近藤太二
 ウインズロ効果とは懸濁液(電気粘性流体)の粘度が外部電界によって増大する現象であるが,本研究では分散相としてイオン交換樹脂を用いることにより,より大きな効果を生じ安定な電気流体の開発を行なった。
 イオン交換樹脂の場合の電気2重層は固定イオンと対立イオンから構成されており,本研究では対立イオンを変化することにより,多種の電気2重層を構成し,電気2重層とウインズロ効果の関係を明確にした。(図14,写真3,表4,参7)

球面ガス爆ごう波の直接起爆限界エネルギー

RR-24-9
山野英記,本山建雄
 アセチレン・酸素混合ガスについて,球面ガス爆ごう波の電気容量火花による直接起爆限界エネルギーにおよぼす電極形状および電極距離の影響について実験的な研究を行った。その結果電極距離が最小起爆径より大きい場合には,球面ガス爆ごうの起爆過程は円筒空間におけるそれに帰結することがわかった。この本質的な測定値を基準にして既に得られている他の種々の点火源による測定値との比較,検討を行い,種々点火源によるガスへのエネルギー伝達機構および起爆過程での効率について有益な知見を得た。(図8,写真2,参12)


刊行物・報告書等 研究成果一覧