労働安全衛生総合研究所

研究報告 RR-20 の抄録

固体の消炎距離

RR-20-1
駒宮功額
 固体の消炎距離を知るため,金属製ホルダーを作り,その間に固体試料をはさみ,酸素,酸素–窒素混合ガスおよび亜酸化窒素を用い,大気圧以上の条件で実験を行なった.その結果再現性のよい数値が得られ,ポリエチレンや和紙などの数値は酸素中では水素の消炎距離に近いものであった.この性質を応用し,紙の消炎距離を測定することにより,酸素濃度の分析を試み,それが可能であることがわかった.また,物質の燃焼性試験法として酸素指数方式よりも実用性が認められた.このほか燃焼現象の研究にも本法が役立つことを知った.(図20,表11,参10)

安全ネットの性能向上 –安全ネットの特性について–

RR-20-2
木下鈞一,小川勝教
 墜落災害防止用ネットについての構造規準を定めるため,各種の合成繊維で製作された安全ネットに落下衝撃を加える実験を行なった.この実験の結果からネットに作用する最大衝撃荷重,衝撃荷重時のネットの最大変位量などを求める関係式を得た.またその他落下衝撃をうけるネットの力学的性状のいくつかの点について明らかにした.(表10,図21,写真2,参5)

照射ポリエチレンの燃焼性に関する研究(第1報) –軟化及び示差熱重量分析について–

RR-20-3
森崎繁
 照射低密度ポリエチレンの軟化温度は,照射線量の増加にともない照射高密度ポリエチレンのそれよりはるかに増加した。熱重量分析の結果からほ,照射ポリエチレンは,空気中においては3段階で分解するが,窒素中では1段階で分解を終了する。これらの照射ポリエチレンは,活性化エネルギーの計算からも認められるように,窒素中では容易に分解し,また空気中においては,比較的低温において分解を開始する。しかしながら,照射ポリエチレンは,未照射のポリエチレンより難燃性になっている。なぜならば,発火温度と考えられる空気中における第2次の分解開始温度および第2次分解終了後の残渣が,照射線量の増加につれて増大するからである。加うるに,照射ポリエチレンの熱分解の機構を調べるため,示差熱分析もあわせて実施した。(図22,表3,参12)

金属の損傷原因に関する電子顕微鏡的研究(第2報) –高力アルミ合金の疲れ破面に観察されるstriationの解明–

RR-20-4
秋山英司,近藤太二,橘内良雄
 破面から応力状態を定量的に知ることが可能な解析方法を求めると共に,疲れ破壊のメカニズムを明らかにするために,高力アルミ合金の疲れ破面に観察される striation について定量的な検討を行なった.
 striation の解明にはミクロフォトメータを用い,striation 間隔と巨視的き裂伝ぱ速度および striation 間隔と応力拡大係数レンジ ΔK の関係などについて明らかにした.また透過率曲線を striation の形状と仮定して,striation の形状をフーリエ解析で,striation 間隔の変動を自己相関関数によって示した.(表3,図15,参28)

管路の拡大による気体爆轟波の中断(第1報) –アセチレン・酸素爆轟波について管路を二次元的に拡大した場合–

RR-20-5
松井英憲
 2次元形状の薄い爆轟波管を用いて,管路を途中で拡大した場合の爆轟波の特性について実験を行った。
 アセチレン,酸素混合ガスについて,管路の拡大比,初圧,ガス組成を変えることによって,流し写真および静止写真から爆轟中断距離(一般には爆轟誘導距離),中断開始圧力および管路拡大後の火炎速度変化を測定した。(表2,図15,参8)


刊行物・報告書等 研究成果一覧