労働安全衛生総合研究所

働く人の健康に関する研究施設の公開(登戸地区)
-平成27年度一般公開を終えて-

 本年度の登戸地区研究施設の一般公開は4月18日土曜日に行いました。例年、当地区施設の公開日は日曜日としてきましたが、今回は運航を開始した長尾台コミュニティバスが日曜運休である事を考慮して、土曜日の開催としたものです。今年は4月初旬から天候不順で公開日の空模様も心配されましたが、幸い当日は朝から快晴となり、日中は風が多少強かったものの、最終的には78名の皆様にご来場頂きました。土曜日公開としたことが影響したのか、小学生の方の来場が減った点は残念でしたが、わざわざ遠方からお越し頂いた方や、リピートで来られる方もおりました。毎年のことながら、皆様の温かいご支援・ご愛顧に職員一同、厚く御礼申し上げます。
 今年度の一般公開でも、従来と同じ様に、講演、施設公開、研究体験/実演コーナー、ポスター展示等を行いました。以下に、各セクションにおける当日の様子をご紹介してゆきます。

1.講演

 今回の講演のタイトルは「暑さをしのぐ身体のしくみ -人間は暑さに弱い-」として、人間工学・リスク管理研究グループの研究員が担当しました。昨今の熱中症の増加を反映して、最近では夏季になると熱中症関係のニュースが連日のように流れます。労働現場に限らず、過度の暑気にさらされれば誰でもかかる可能性のある熱中症は、聴講された方々にとっても身近な話題であったかと思います。アンケート回答においても、「来年聴いてみたい講演」のテーマとして熱中症対策が複数挙げられており、皆様からの関心の高さが伺われました。講演でご紹介した「暑さをしのぐ方法」や「暑さに強くなる方法」に関する知識は、間もなく訪れる夏場を健康に乗り切る上でお役に立てるのではないでしょうか。


講演会場(研究本館2階)

2.施設公開

 今年も、研究本館1階の電子顕微鏡室と粉じん実験室、および研究本館の隣接棟の地階にある振動実験室の三ヵ所を公開しました。
 電子顕微鏡室には鉱物に詳しい環境計測管理研究グループの研究員3名が常駐して解説を担当し、電子顕微鏡による微小有害物質(粉じんやアスベストなど)の観察についてご紹介すると共に、労働衛生における電顕観察の役割についてもご説明しました。見学された方からは、「とても小さなものを実際の目で見たような感覚で楽しめた。」とのコメントも頂き、ご好評を得られたものと理解しております。また他にも、「もっと身の周りにある物を観察してみたい」とのご意見を頂戴しましたので、来年度の公開の際に活かしたいと思います。


電子顕微鏡室 (B1会場)

 粉じん実験室は、環境計測管理研究グループの研究員3名が担当して粉じんの発生と濃度測定の実演を行いました。日頃、この研究所(登戸地区)では工場内や土木・建設現場などで発生する粉じんに関係した研究も進めています。実演と並んで、それらの研究成果についてもパネルを使ってご紹介しました。来場された方からは「PM4(注)を初めて知った」とのコメントを頂き、粉じんに対するご理解への一助になれたようです。またこの他にも、放射性粉じんや粉じん対策(全体換気)に関する研究の紹介や解説をご所望する声が寄せられましたので、次回の展示に加えられないか今後検討したいと思います。
  (注)PM4とは、「粒径が4 μm の粒子に対して50%カットの分粒特性を持つ分粒装置で捕集した粉じん」と定義されます。


粉じん実験室 (B2会場)

 振動の体験は、研究本館とは別棟の会場(C1会場)にて行い、2種類の振動(手腕振動および全身振動)を体験して頂きました。昨年までは説明対応に3名を配置していましたが、今年は人員の都合上、研究調整企画部と人間工学/リスク管理研究グループの研究員2名が担当です。手腕振動の体験では、先ず素手で振動発生装置に触れて頂き、次に防振手袋を付けた状態で再度同じ振動に触れて、手袋の効果を体感して頂きました。全身振動の体験コーナーでは、発生する振動の周波数を徐々に変えてゆくと、振動を感じる体の部位も変化してゆくことを実感して頂きました。実際に体験した方からは「期待以上だった」との嬉しい評価を頂きました。


振動実験室(C1会場)

3.研究体験/実演コーナー

 こちらも人員や設備等の都合上、今年は細胞観察(B4会場)、DNA検査(B3会場)、脳と行動(B3会場)の3コーナーをご用意して皆様に見学や体験をして頂きました。以下に、各会場の様子を簡単にお伝えします。なお、清瀬地区の出張展示として当日B3会場で予定していた「デジタルマイクロスコープの実演」は、担当者の急な出張のため、やむなく中止とさせて頂きました。見学を希望された方々にご迷惑をお掛けしたこと、この場にてお詫び申し上げます。
 B4会場(病理実験室)は、健康障害予防研究グループと有害性評価研究グループの研究員4名が担当し、「顕微鏡標本から知る細胞の役割」というタイトルで生体組織観察を体験して頂きました。この際、見学者ご自身の口腔内から採取した細胞を染色して光学顕微鏡で観察し、細胞の役割や他の細胞との違いなどを理解して頂けるよう努めました。小学2年生のお子様を連れて見学に来られた方からは、「楽しめる装置(顕微鏡)があり、よかったです。」とのコメントを頂き励まされました。また、中学生の方からは「細胞の役割は凄いと思った。」との感想を頂きました。もしこのコーナーから知的な驚きを体感して頂けたなら望外の喜びです。


病理実験室(B4会場)

 DNA検査(B3会場)のコーナーは、「DNA(ディーエヌエー)ってなんだろう?」と題し、健康障害予防研究グループと研究企画調整部の研究員3名が応対に当たりました。ここでは身近な食品を使った実演(バナナからDNAを取り出し、それを観察する作業)を通じてDNA検査が幾つかのステップを経て行われることを理解して頂きました。参加した中学1年生の方からは「食べ物にもDNAがあることを知った」というアンケート回答を頂きましたが、もしこの実演コーナーで新たな理科の知識が得られたのであれば幸いです。


DNA検査(B3会場)


  同じくB3会場の「脳と行動」のコーナーは健康障害予防研究グループの研究員2名が担当し、ラットの行動を記録した動物実験のVTRや顕微鏡および標本などを用いて、化学物質が脳や学習機能に及ぼす影響について分かり易くご説明しました。山口県からお越しの会社員の方からは「安全におけるノンテクニカルスキルに注目している関係で、ラットの行動がどの因子への影響で阻害されているのかの観察に強い興味を持った」との専門的なコメントを頂き、ご見識の高さを伺わせました。例年、登戸の施設公開では小学生-中学生の方をメインターゲットに企画していますが、安全分野に明るい方にもご興味を持って頂けたようで誠に恐縮です。


脳と行動(B3会場)

4.ポスター展示

   管理棟1階を会場として、今年の展示では8課題(うち2課題は清瀬地区からの出張展示)の紹介を行い、有害性評価研究グループ、作業条件適応研究グループ、環境計測管理研究グループ、化学安全研究グループ、機械システム安全研究グループの各研究員が担当しました。例年通りポスター会場は休憩室を兼ねていたので、来場された皆様とくつろぎながらも、展示内容に限らず、研究所全般ひいては労働衛生全般にわたる幅広いお話しが出来たように感じています。「非常に丁寧なご説明を頂き感謝しております」や「ご担当研究者の説明でよく分かった」といった温かいコメントを頂戴した一方で、「字が小さいので、図表も含め、もう少し大きくすると理解しやすい」とのお声もあり、次回以降に改善すべき点が浮き彫りになりました。今後ともご助言・ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。


ポスター展示(A会場)

5.おわりに

   お忙しい中ご来場下さりました皆様、誠に有難うございました。回収したアンケートを集計したところ、来場された方のちょうど6割が今回初めて当研究所へ来られたそうです。「また来年も来たい」とのコメントも頂き、大変励まされました。是非とも宜しくお願い致します。
  登戸地区の施設公開では、一般の方、特に小学生-中学生の方を意識して、毎回主な公開内容を企画しております。従って、より専門性の高い内容を期待された方には多少物足りなく思われたかも知れません。当研究所では、研究成果の発表媒体として独自の刊行物や電子媒体(メールマガジン)を発行しておりますので、宜しければこちらもご参照頂ければ幸いです。詳しくは、当研究所のホームページをご覧ください。今後とも当研究所にご支援・ご指導を賜りますようお願い致します。
 最後に、本年度の登戸地区一般公開の概要を記載したプログラムを研究所ホームページの中にアップしております。ご興味のある方は下記のURLからご覧ください。
https://www.jniosh.go.jp/announce/2015/open2015/pdf/H27noborito_program.pdf

(環境計測管理研究グループ 上席研究員  小嶋 純)

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