労働安全衛生総合研究所

働く人の安全に関する研究施設の公開(清瀬地区)
-平成26年度一般公開を終えて-

 4月16日(水)13:00から17:00まで、清瀬地区の平成26年度研究施設一般公開を開催いたしました。当日は、好天にも恵まれ、正午前から続々とご来場者がみえ、予定を30分繰り上げ、13:00より施設公開を開始しました。16:00の受付終了時間を過ぎてもご来場者があり、近隣住民の方々を含め、最終的に386名の方々にご来場いただきました。

 清瀬地区では、所内11か所の会場において、最近の研究成果の紹介、実験デモ、展示等、合計13件の公開を実施し、どの会場もたくさんの方々にご来場いただきました。以下、各施設公開等の様子を簡単にご紹介します。

実験施設の公開と展示



(1) 環境安全実験棟・研究討議室


①『新しい作業者教育』
 次の2つの安全教育用ツールを紹介しました。
  1. 「タブレット端末を用いた建設作業者向け安全教材ツールの開発-危ない写真にタッチ!で危険要因を覚えよう」というテーマで、建設作業者向けのタブレット端末を用いた安全教材の開発と効果検証実験について紹介し、安全教材のデモを行いました。

  2. 「中小規模事業場に対し、どのようにして効果的な教育を行うか」をテーマに、公共工事発注者による作業者教育支援の事例として、東京都水道局が制作し当研究所が監修協力したDVD「水道工事事故防止アクションプラン」の上映等を行いました。


(2) 環境安全実験棟・人工気象室


②『熱中症を誘発する暑熱環境』
 温熱環境の測定機器の説明と、扇風機による身体冷却方法について解説しました。また温度・湿度が異なる2つの人工気象室に入室していただき、皮膚感覚で数値が当てられるか体験していただきました。









(3) 建設安全実験棟・遠心模型実験室


③『地盤に関する災害を実験的に再現する』
 土砂崩壊をスケールモデルで再現する遠心模型実験装置を使った実験を実施し、遠心力を上昇させることで土砂が崩壊する様子を観察していただきました。今年度は公開実験として2種類のモデル(1回目は地すべりによる土砂崩壊、2回目は溝掘削による土砂崩壊)で実施しました。 公開実験では、実験室から溢れるくらいの多くの皆様にご覧いただきました。




(4) 建設安全実験棟・多目的大型実験室


④『高所からの墜落事故を減少させる』
 実物大の屋根実験設備によるはしごを用いた墜落実験の実演やこれまで行った実験のビデオをご覧いただきながら、既存建築物の改修工事などで災害発生件数の多い、屋根からの墜落の防止について解説しました。




(5) 材料・新技術実験棟・高速回転等実験室


⑤『クレーン用ロープの劣化を検出する実験』
 ワイヤロープの劣化を非破壊的に検出する装置を紹介し、実際にワイヤロープの劣化を検出する様子をご覧いただきました。また、今後普及が期待される炭素繊維ロープについて、最新の研究成果を紹介するとともに、その「軽さ」と「強度」を実感していただきました。










(6) 機械安全システム実験棟・大実験室


⑥『危険な機械に接近して行う作業の安全対策』
 統合生産システムの入退出管理システムや、プレスブレーキ用安全システム、また福祉機器に対する挟まれ防止対策や、食品加工作業に対する設備対策と切創防止用保護手袋について紹介しました。




(7) 配管等爆発実験施設・中規模爆発実験室


 次の2件の実験デモを行いました。
⑦『可燃性液体の爆発・火災危険性評価』
 液体燃料や有機溶剤などの可燃性液体による爆発・火災の基礎と対策について解説しました。また、簡単な模擬実験により、可燃性液体が混合された時の爆発・火災危険性の違いを体験していただきました。




⑧『化学プロセスにおける異常な反応の火災危険性評価』
 化学工場で異常な反応が起こった時の爆発に至るまでの現象及びその危険性を分析する装置について解説しました。また、簡単な模擬実験により、異物が混入した時の異常な反応が進む様子を体験していただきました。




(8) 電気安全実験棟・粉体帯電実験室


⑨『粉じん爆発の原因となる静電気放電の防止対策』
 実規模の粉体空気輸送設備において粉体が帯電し発生する静電気放電の様子や、可燃物が静電気で着火する現象をビデオでご覧いただきながら解説しました。また、簡単な静電気放電を体験していただきました。




(9) 電気安全実験棟・高圧ガス実験室


⑩『静電気の放電と着火能力の実験』
 器材を用いて摩擦帯電、静電誘導、火花放電、沿面放電を実演し、最後に可燃性液体及び粉体の着火実験を行いました。着火実験ビデオ、静電発電機等の展示も行いました。




(10) 本部棟1階・第2会議室


 本部棟1Fの第2会議室では、次の2件の研究紹介を行いました。
⑪『ロールボックスパレットによる災害を防止するには』
  スーパーマーケット等で使用されているロールボックスパレットと呼ばれる荷役機器を使用している際に発生した労働災害の実態、災害防止に求められる使用ルール整備の必要性を解説しました。また、改良型のロールボックスパレットや手袋一体型プロテクターの試作品等を体験していただきました。




⑫『化学物質の「におい」と健康影響』
 低濃度の物質のにおいを使った嫌悪条件付け実験および有害化学物質の中枢神経系への影響を評価するための研究の意義、方法等について、ポスターで解説いたしました。動物の行動試験の様子をビデオで紹介しました。




(11) 本部棟2階・大講義室前


⑬『昔の労働安全衛生のポスター展』
 国内外の労働安全衛生運動の貴重な史料として、当研究所で収集した労働安全衛生ポスターの一部を展示しました。来場者の中には、写真に撮られている方もおられ、皆さん熱心に鑑賞されていました。





おわりに

 平日にもかかわらず、本年度も大勢の方々にご来場いただきました。皆様から頂いたアンケートでは、ほぼ半数の方が今回の一般公開で初めて当研究所のことをお知りになったようです。この公開を切っ掛けに、当研究所の業務をご理解いただくとともに、私どもの研究成果を職場の安全活動にご活用いただければ幸いです。
 今回、来場者が私どもの想定していた人数を大幅に超えたため、時間に合わせて施設を訪れていただいたにもかかわらず、一部の公開施設や実験デモが人垣でよく見えないということがありました。誠に申し訳ございませんでした。その他、アンケートでいただいた貴重なご意見と合わせて、来年度の一般公開では改善する所存です。
 最後に、本年度の清瀬地区一般公開の内容については当日配布させていただいたパンフレットにも概要を記載しております。ご興味のある方は下記のURLからご覧ください。
https://www.jniosh.johas.go.jp/announce/2014/open2014/pdf/H26kiyose_pamphlet.pdf [PDF]

(化学安全研究グループ 上席研究員 島田行恭)

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