独立行政法人改革と我が労働安全衛生総合研究所
独立行政法人の改革については、これまでもいろいろニュースとなっているところですが、当労働安全衛生総合研究所がどうなるのか、現状でどう決まっているのか、なかなか分かりづらいとの意見も頂きます。これに対する正式な回答としては、現在は「決まっていません。」と言わざるを得ません。独立行政法人は法律(通則法、個別法)により規定されている組織であって、その改変は国会で審議、決定されるべきものであるからです。
しかしながら、国会での審議の前に公的な決定がなされてきたことも事実です。ここで、これまでの経過をざっとおさらいしてみましょう。
平成18年4月の労働安全衛生総合研究所発足(産業安全研究所と産業医学総合研究所の統合)以降、約3回の統合・改革案が浮いては消え、現在は4回目の改革案が出されている状態にあります。
さて、改革案には統廃合と類型化の話以外にも多くの内容が盛り込まれているのですが、それはさておき、当労働安全衛生総合研究所については2つの問題に注目するべきでしょう。一つは統合とその相手のこと、もう一つは研究開発型でなく中期目標管理型の法人となることです。
しかし、問いかけておいてはぐらかすようですが、私としては、そのいずれも大きな問題とはなりえないと考えています。統合によってもこの研究所の使命に変わりはなく、その成果を求めている相手も変わりません。また、後者についても、我々の研究成果発出は手段であってそれ自身が目的ではないはずであり、研究開発型独法の範疇外と考えることができなくはありません。いずれにせよ重要なことは、本来の使命を見失わず働く人の事故・疾病の防止や減少に貢献する研究を実施することのはずです。
参考文献
しかしながら、国会での審議の前に公的な決定がなされてきたことも事実です。ここで、これまでの経過をざっとおさらいしてみましょう。
平成18年4月の労働安全衛生総合研究所発足(産業安全研究所と産業医学総合研究所の統合)以降、約3回の統合・改革案が浮いては消え、現在は4回目の改革案が出されている状態にあります。
- 平成19年12月24日閣議決定「独立行政法人整理合理化計画1)」
詳しくは下記参考文献のリンク先をご覧頂きたいと思いますが、ここでは101法人を85法人に削減するなどの見直しが計画されました。当研究所については「労働安全衛生に係る研究業務等の一層の総合化を図る観点から、独立行政法人労働者健康福祉機構と統合する。」とされました。しかし、平成20年4月に提出された独立行政法人通則法改正案等は平成21年7月に廃案となり、法人削減の閣議決定も凍結されました。
- 平成22年4月26日第5回厚生労働省省内事業仕分けの結果2)、「(独)医薬基盤研究所及び(独)国立健康・栄養研究所との統合等による効率化を図る。」とされました。しかし、この案はさらに検討が加えられ、実現に至りませんでした。
- 平成24年1月20日閣議決定「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針3)」
このときは102法人を64法人に統廃合するなどの見直しが計画されました。当研究所については、
【労働安全衛生総合研究所及び労働政策研究・研修機構】
上記2法人を統合し、成果目標達成法人とする。
とされました。
この基本方針では、独立行政法人を以下の2種類、8類型に分類するとされています。
- 成果目標達成法人(研究開発型・金融業務型・文化振興型・大学連携型・国際業務型・人材育成型・行政事業型)
- 行政執行法人
- 平成25年12月24日閣議決定「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」
これが現在有効な改革案です。ここでは、
【労働安全衛生総合研究所、労働者健康福祉機構】
- 上記2法人を統合し、中期目標管理型の法人とする。
- 国が委託事業として実施している産業保健支援に関する事業及び化学物質の有害性調査(日本バイオアッセイ研究センター事業)については、統合法人の業務として集約し、一元的に実施する。
この基本方針では、独立行政法人を3つに分類することとしています。
- 中期目標管理型の法人:国民向けサービス等の業務の質の向上を図ることを目的とする法人
- 研究開発型の法人:「研究開発成果の最大化」を目的とする法人
- 単年度管理型の法人:役職員に国家公務員の身分を付与し、単年度の目標管理による法人
- 【研究開発型の法人】
情報通信研究機構、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、科学技術振興機構、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構、海洋研究開発機構、日本原子力研究開発機構、国立健康・栄養研究所+医薬基盤研究所、国立高度専門医療研究センター(国立がん研究センターなど)、種苗管理センター+農業・食品産業技術総合研究機構+農業生物資源研究所+農業環境技術研究所、水産大学校+水産総合研究センター、国際農林水産業研究センター、森林総合研究所、産業技術総合研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構、土木研究所、建築研究所、海上技術安全研究所+港湾空港技術研究所+電子航法研究所、国立環境研究所- 【中期目標管理型の法人】
酒類総合研究所、労働安全衛生総合研究所+労働者健康福祉機構、労働政策研究・研修機構、家畜改良センター、経済産業研究所、交通安全環境研究所+自動車検査独立行政法人
さて、改革案には統廃合と類型化の話以外にも多くの内容が盛り込まれているのですが、それはさておき、当労働安全衛生総合研究所については2つの問題に注目するべきでしょう。一つは統合とその相手のこと、もう一つは研究開発型でなく中期目標管理型の法人となることです。
しかし、問いかけておいてはぐらかすようですが、私としては、そのいずれも大きな問題とはなりえないと考えています。統合によってもこの研究所の使命に変わりはなく、その成果を求めている相手も変わりません。また、後者についても、我々の研究成果発出は手段であってそれ自身が目的ではないはずであり、研究開発型独法の範疇外と考えることができなくはありません。いずれにせよ重要なことは、本来の使命を見失わず働く人の事故・疾病の防止や減少に貢献する研究を実施することのはずです。
参考文献
- 平成19年12月24日閣議決定「独立行政法人整理合理化計画」
http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/tokusyu/h191224/gourika_zentai.pdf - 平成22年4月26日第5回厚生労働省省内事業仕分けの結果
http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/rouanken_6.pdf - 平成24年1月20日閣議決定「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」
http://www.gyoukaku.go.jp/suishinnshitsu/siryou/dokuhou/120120_khoshin.pdf - 平成25年12月24日閣議決定「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/pdf/sankou-k3.pdf
(理事長 前田豊)