労働安全衛生総合研究所

働く人の安全に関する研究施設の公開(清瀬地区)
-平成25年度一般公開を終えて-

 4月17日(水)12時30分から17時まで、清瀬地区の平成25年度研究施設一般公開を開催いたしました。当日は、あいにくの曇天で、また強風のため交通機関に遅れが生じていたにもかかわらず、正午前から続々と御来場者がみえ、予定よりも早く受付を開始しました。午後4時の受付終了時間まで御来場者は途絶えず、近隣住民の方から遠くは岡山県の方まで、最終的に400名というこれまでにない大勢の方々に御来場いただきました。
 清瀬地区では、講演、施設公開(実験を含む。)、展示等計13件の公開を実施しました。以下、これらの様子を簡単に御紹介します。

1.講演(12:30-13:30)



 本部棟大講義室(定員150名)において、安全講演として『エレベーター等の危険性』を、健康講演として『職場における熱中症対策』を行いました。安全講演では、最近、人が挟まれる事故が相次いでいるエレベーターを中心に、昇降・搬送機械に潜む危険性を紹介し、これらの安全管理方法について解説しました。また、健康講演では、地球温暖化の影響によって増加傾向にある職場の熱中症について、最新の研究成果を交えながら予防対策について平易に解説しました。
 大講義室は、開場と同時にほぼ満員となり、講演では活発な質疑応答が行われました。また、講演終了後も、来場者の方が講演者に改めて質問する姿が見受けられ、講演テーマに対する御来場者の興味の高さがうかがえました。

左:エレベーター等の危険性、右:職場における熱中症対策

2.実験施設の公開と展示



 所内10か所の公開施設において、次のとおり実験設備等を公開するとともに、最近の研究成果の紹介を行いました。どの会場もたくさんの方々に御来場いただきました。

(1) 環境安全実験棟・研究討議室 
 『ロールボックスパレット起因災害防止に求められる対策』と題して、スーパーマーケット等でよく使用されている、ロールボックスパレットに起因した労働災害の実態と、災害防止のための適切な使用方法、プロテクターについて紹介しました。


(2) 建設安全実験棟・遠心模型実験室
 『地盤に関する災害を実験的に再現する』と題して、土砂崩壊をスケールモデルで再現する遠心模型実験装置を使った実験を実施し、切土堀削工事において斜面崩壊が発生する様子を、モニターを通して観察していただきました。


(3) 建設安全実験棟・多目的大型実験室
 『高所からの墜落事故を減少させる』と題して、実物大の屋根実験設備による墜落実験を御覧いただき、既存建物の改修工事で多発する屋根からの墜落を防止する研究とその成果を紹介しました。


(4) 施工シミュレーション施設・大実験室
 『土砂崩れや建設機械の転倒を実物大実験で再現する』と題して、土砂崩れで作業員が生き埋めになったり、建設機械が転倒したりする原因を、実験を撮影したビデオやパネルで解説しました。


(5) 材料・新技術実験棟・高速回転等実験室
 『ワイヤロープの劣化を再現する実験』と題して、ワイヤロープを人工的に劣化させる装置を紹介し、クレーンに使用されるワイヤロープが劣化・断線する仕組みを解説しました。また、今後普及が期待される炭素繊維ロープの劣化メカニズムと劣化検出法について、最新の研究成果を紹介しました。


(6) 機械安全システム実験棟・大実験室
 『機械設備の安全対策』と題し、フォークリフトを使った荷役作業や、プレス加工作業など、人間が機械に接近して行う作業の安全対策として、最新のセンサとインタロックを用いた安全制御技術を紹介しました。


(7) 配管等爆発実験施設・中規模爆発実験室
 『爆発放散ベントに関する実験』と題して、集じん機やサイロなど爆発のおそれがある設備で、爆発被害を軽減させる『放散ベント』という仕組みについて解説しました。また、簡単な模擬実験により、爆発放散によって被害が抑えられる様子を体験していただきました。


(8) 電気安全実験棟・粉体帯電実験室
 『粉体貯蔵槽で発生する静電気放電とその防止対策』と題して、実規模の粉体空気輸送設備において粉体が帯電し放電する様子や、可燃物が静電気で着火する現象をビデオで御覧いただきながら解説しました。また、簡単な静電気放電を体験していただきました。


(9) 本部棟・第2会議室
 本部棟1Fの第2会議室では、次の2件の研究紹介を行いました。
・『タブレット端末を用いた建設作業者向け安全教材ツールの開発』と題して、直感的に操作できるタブレット端末を活用した、建設作業者向け安全教育ツールを紹介するとともに、実際にタブレット端末を操作していただき、教育効果を体験していただきました。


・『爆発火災データベースによる災害事例の検索』と題して、当研究所のホームページで公開している災害情報を、爆発火災データベースを中心に、パソコンで検索する方法を体験していただきました。

https://www.jniosh.go.jp/results/2012/0108/index.html

(10) 本部棟・大講義室前
 我が国における労働安全衛生運動の貴重な史料として、当研究所で蒐集した安全衛生ポスターの一部を、昭和初期のものを中心に展示しました。来場者の中には、写真に撮られている方もおられ、皆さん熱心に鑑賞されていました。
 また、アンケートでは、昔のポスターの方が味があり、伝えたいことが明確であるといった感想もいただきました。

3.おわりに



 平日にもかかわらず、本年度も大勢の方々に御来場いただきました。皆様から頂いたアンケートによれば、半数以上の方が今回の一般公開で初めて当研究所のことをお知りになったようです。この公開をきっかけに、当研究所の業務を御理解いただくとともに、私どもの研究成果を職場の安全に御活用いただければ幸いです。
 今回、来場者が私どもの想定していた人数を大幅に超えたため、開場後に来場された方が大講義室に入室できない、あるいは一部の実験施設や公開実験が人垣でよく見えないということがありました。また、一部の公開施設で、予定した時間より早く実験を開始してしまうというミスがありました。誠に申し訳ございませんでした。アンケートでいただいた貴重な御意見と合わせて、来年度の一般公開では改善する所存です。

(機械システム安全研究グループ 上席研究員 本田  尚)

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