労働安全衛生総合研究所

統合生産システム(IMS)の安全な作業のあり方について

 ISO/IEC Guide 51、ISO12100、ISO14121をはじめとする機械の国際安全規格や、機械の包括的安全基準に関する指針などが提案されて、その内容がかなり知られるようになってきています。しかし近年、機械を単独に使用する形態から、複数の機械を協調して使用する統合生産システムが多く見られるようになってきています。従来は、単独の機械について、可動範囲を危険エリアとして設定し、そのエリアをフェンスやガードで遮蔽することで安全性を確保していました。しかし、複数の機械の複雑に重なる危険エリア内でのメンテナンスやティーチング等の人と機械とが接近した作業は、日常的に必須なケースが多く、その作業を実施する上で、安全機能を働かせるために複雑な手順・操作・管理を実施している例が多数見受けられます。そのため、作業性・効率性が悪いなどから、往々にして安全機能の無効化を行い、その結果災害に至るケースがあります。

 機械を安全に動作させる前提条件は、「人が危険エリア内にいる場合は機械を起動させない」ということです。非定常作業等のためどうしても危険エリアへの進入をしなければならない場合は、対象となる作業ごとに適切な作業者が従事することとともに、対象となる作業の範囲を明確にして、作業者が決められた範囲内にいることを常時確認する必要があります。そのため、当研究所では、これらの前提条件を実現する方策として、アクティブICタグ(RFID)、およびカメラを活用したシステムを提案し、安全性の検証を行っています。

 アクティブICタグ(RFID)とカメラの活用は、将来的にフェンスやガードを設けずに危険エリアをバーチャル化することも期待できる技術です。今後は、これらのシステムについて、安全性と生産性両面からの検討を行うとともに、生産統合システムにおける基本要求事項を定義したISO11161への国際提案も視野に入れた研究を行っていきます。


(機械システム安全研究グループ 上席研究員 清水尚憲)

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