労働安全衛生総合研究所

新人紹介

機械システム安全研究グループ 岡部 康平



 人間機械協調系における安全性の研究に従事しております。これまでは、高度道路交通システムや次世代型移動体など、日常生活で身近にある機械システムを対象に研究しておりました。今後は主にNEDOからの受諾研究である「生活支援ロボットの安全性評価手法の開発」とプロジェクト研究「第三次産業で使用する機械設備の基本安全技術の開発」に取り組みます。
 第三次産業では給仕ロボットや介護ロボットなど、人と接することを前提とする従来の産業用ロボットとは異質な機械システムの導入が検討されております。それらの導入により労働環境はより、複雑化、多様化するものと予想されます。そこでの変化に充分対応できる実用的で温故知新な安全設計を志して、労働災害の防止に日々努める所存であります。


建設安全研究グループ 堀 智仁



写真:新入研究員「堀智仁」

 平成22年度4月1日付けで、建設安全研究グループに任期付研究員として着任致しました堀と申します。これまでリサーチレジデントとして、本研究所で3年間、基礎工事用建設機械の転倒防止に関する研究に従事し、国内外の法令規則の調査や、実大実験、遠心場模型実験、災害調査を行ってきました。短い期間ではありますが、労働安全衛生研究に携わり、施工の過程で作業されている方々が潜在的な危険にさらされている事を知り、施工中の安全対策は完成後の構造物の性能と同等に重要であるとともに、危険を伴う作業を少しでも改善することが急務であると感じました。
 地盤工学に関連した労働災害は、掘削工事時の土砂崩壊、坑内での落盤、地盤の支持力不足による建設機械の転倒、災害復旧時の二次災害などがありますが、それらの発生メカニズムについて解明されているものは少なく、基準についても未整備なものが多いのが現状です。これらの問題に取り組み、労働者の方が安心して働くことのできる環境を整えることが我々の使命だと思っております。今後とも皆様のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


化学安全研究グループ 木村 新太



写真:新入研究員「木村新太」

 平成22年4月1日付けで、化学安全研究グループの任期付き研究員に着任致しました。学部から博士課程(後期)を修了するまで、横浜国立大学で化学プラントにおける化学反応の暴走やそれに伴う火災・爆発などを扱う、化学安全を専門として研究を行って参りました。
 一般的に、化学物質のライフサイクルの下流である消費者が手にする化学製品は、化学的に安定性が高く、有害性も許容レベルを満たしているのに対して、上流(製造、輸送するステージ)では反応性、有害性、危険性を有する化学物質を化学反応によって合成、加工して製品の原料を製造しています。このことから、上流である労働現場において一度災害が発生すると大規模な火災や化学物質の漏えいによって甚大な人的被害や環境被害をもたらすことが起こりえるため、これらの災害予防を目的とする研究はきわめて重要であるといえます。
 本研究所において、化学災害の原因究明と未然防止のための研究を行っていくと同時に、中小規模の事業者の安全衛生活動の支援をもうひとつのテーマとして、産業安全に資する研究に日々精進してまいりたいと思っています。何卒よろしくお願いいたします。


作業条件適応研究グループ 小崎 智照



写真:新入研究員「小崎智照」

 平成22年4月1日付けで作業条件適応研究グループに研究員として着任致しました。これまで人間工学分野において人工環境による生体反応を調べ、ヒトに適した人工環境について研究を行ってきました。その中でも最近は人工照明光について着目し、どのような光の色や強さがヒトの生体に作用するのか研究を行っていました。ヒトの生体の中でも、特に生体リズムは光を最大の同調因子としています。またヒトの覚醒も光に強く影響を受けます。ヒトが本来、自然環境に適応し、進化してきたことを考えると、昼間は太陽光のような強い光を浴び、夜間は月明かりやたき火程度の弱い光に曝されることで生体リズムや覚醒・睡眠リズムを生活リズムに同調させてきたと考えられます。さらに最近の研究では光以外にも食事や運動なども生体リズムに作用することが明らかとなってきており、それらの生活習慣も生体リズムを考える上で重要になってきました。
 しかし、現在の日本には医療福祉施設やコンビニエンスストアなどの24時間化した労働現場が存在します。このような光環境や生活習慣が一定しない労働現場では生体リズムが乱れ、“昼間でも眠い”とか“夜でも眠れない”といったことが起こる可能性が高くなります。そのような状況になると労働者が勤務中に眠気を強く感じ、ヒューマンエラーを引き起こす可能性があります。さらには睡眠不足といった労働者の健康リスクにもつながる恐れがあります。24時間化が進み、医療福祉の充実を急務とする日本では、今後そのような労働現場の問題が増えてくることと予想されます。  これらの問題に対して、私がこれまでに培ってきた技術や経験、知識を生かし、さまざまな雇用形態の労働者に適した人工環境のあり方について提案を行い、ヒューマンエラーの軽減や労働者の健康維持に生かしたいと思っております。よろしくお願いいたします。


作業条件適応研究グループ 土屋 政雄



写真:新入研究員「土屋政雄」

 平成22年4月1日付けで任期付研究員として着任致しました。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の衛生学・予防医学分野にて博士(医学)を取得後,東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野にて客員研究員として1年間過ごしました。このうち,東京大学へは博士2年次より国内留学をしておりました。これまでの主な研究テーマとして,一般地域住民及び労働者における精神障害の分布や関連要因について疫学的な検討に取り組んでまいりました。この経験から,大規模データセットのデータマネジメントや統計解析について学び,統計解析全般に関心を持つようになりました。他には,症例対照研究による自殺の心理学的剖検や労働者の睡眠を改善するためのwebを活用した行動療法の無作為割付比較試験など様々な研究プロジェクトにかかわり,研究経験を積んでまいりました。
 労働現場とつながる活動として,岡山大学および東京大学において,職場のメンタルヘルスの実務者・研究者の養成コースに3年間参加し,職場のメンタルヘルスに対する全般的な知識・スキルを学んだことや,従業員参加型の職場環境改善グループの講師やファシリテーターとして,実際に企業でワークショップを開き,職場環境の改善活動に携わった経験などがあげられます。
 現在,うつ病などのメンタルヘルス不調の状態であっても仕事に従事している労働者は多く存在し,これに起因すると考えられるパフォーマンス低下(プレゼンティズム)を呈していることが問題となっております。このことは,様々な事故や疾病につながりうると考えられ,労働安全衛生において重要な課題であります。  今後は,まず労働者のメンタルヘルス不調や自殺,またこれと関連した事故や身体疾患を防ぎ,いきいきと働けるような職場環境を整えるための一次予防についての研究を中心に,メンタルヘルス不調とパフォーマンスとの関連や,近年注目が集まっている,労働者における発達的な問題とメンタルヘルスの関連などの研究に取り組んでいきたいと考えております。様々な分野の方と一緒に,幅広い視点で取り組んでいきたいと思っておりますので,ぜひとも皆様の御指導,御高配を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。


健康障害予防研究グループ 柳場 由絵



写真:新入研究員「柳場由絵」

 平成22年4月1日付けで健康障害予防研究グループに任期付研究員として着任致しました。前任地の名古屋大学医学系研究科環境労働衛生学では、マウス(遺伝子改変動物)やラットなどの実験動物を用いて、内分泌かく乱作用が懸念される化学物質として注目された化学物質(食品包装容器に含まれるスチレントリマーやビスフェノールA、有機塩素系化合物の製造過程で発生するオクタクロロスチレン)や、ディーゼル排気微粒子を曝露させ、肝臓での薬物代謝酵素の誘導について研究を行ってきました。また、有機溶剤の一種であるトリクロロエチレンを使用する労働者における全身性皮膚‐肝障害にかかわる中国との共同研究を通じて、ヒトヘルペスウィルス6型(HHV6)の再活性化とHHV6バリアントの解析を行ってきました。この間に培われた解析技術を今後の研究に生かしたいと思っております。
 着任後は、労働現場で使用される化学物質の肝障害を中心とした健康影響に関する研究として、動物を用いた肝障害のメカニズムを解明することを計画しております。得られた知見を許容濃度の設定や健康影響の指標の開発につなげることにより、労働者の健康と安全の向上のために貢献していきたいと思っております。至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆様より御指導、御高配を賜りますよう、お願い申し上げます。


有害性評価研究グループ 劉 欣欣



写真:新入研究員「劉欣欣」

 私は、平成22年4月1日付けで有害性評価研究グループに任期付き研究員として着任した劉欣欣と申します。3月末日までは千葉大学大学院工学研究科で学術研究支援員及び産学官連携研究員として在籍し、精神ストレスに対する循環器系反応の多様性について研究してきました。精神ストレスに対する循環器系の反応(血圧上昇など)は個人差が大きく、血圧の上昇には心臓と血管反応が関与する複数のメカニズムが存在していることが確認されています。私はこれらの点に着目し、様々な精神ストレスと循環器系反応との関連を検討することで、複数の循環器系反応タイプが存在することを確認しました。さらに、精神ストレスに対する循環器系と中枢神経系反応の関係を分析することによって、精神ストレスに対する生理反応の特性(全身的協関)を研究してきました。
 現代社会の働く環境が大きく変化してきています。肉体労働ストレスが軽減する一方、情報システムの発達により、コンピュータ作業などによる精神ストレスが一段と増加しています。これらの精神ストレスに対する生理反応の特徴を調べ、さまざまな特性の違いを持っていることを理解することが、重要であると考えています。労働者に安全な職場環境の提供及び健康維持のため、よりきめの細かい配慮を提案することで、職場環境をはじめとする、私達の生活環境全般を改善することを目指したいと思っております。至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆様の御指導、御高配を賜りますようお願い申し上げます。

刊行物・報告書等 研究成果一覧