オフィスの作業改善プログラム(e-Learning Program)&パソコン利用のアクション・チェックポイント
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オフィスの作業改善プログラム(以下、プログラムと記載)は、未だに多くの訴えのあるVDT作業者の眼の疲れ・痛み、頸肩腕痛、腰痛などの軽減を目的に、改善策の知識やアイデアを学習してもらうために作成したe-Learning programです。e-Learning programとは、コンピュータを利用して多くの人が好きな時に学習できるプログラムです。
VDT作業対策は、ある程度理解されているかもしれませんが、知っていても実施しない、実施できないことが問題となっています。このプログラムでは、既存のガイドラインに加え、我々のこれまでの調査・研究で得られた成果をもとに、その実施方法を紹介しています。
全学習時間は30分から1時間程度です。
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パソコン利用のアクションチェックポイント(以下、チェックポイントと記載)は、e-Learning programの内容を簡潔にまとめた資料で、職場改善マニュアルとしてご活用いただけます。
チェックポイントに記す問題点や改善策は、e-Learning programと同様に、従来の研究成果に我々の調査研究で明らかになったことを加えて作成しています。例えば、近年オフィス環境が整備されることにより、眼の疲れの要因には、照明の明るさや画面との距離などに加え、空調機の風が大きく影響していること、また、近年では各種疲れや痛みなどに精神的ストレスが影響していることなどです。このようなことから、チェックポイントではこれらの点を強調して記載しています。
※プログラムおよびチェックポイントの内容と専門家向けの研究論文との対応は、以下の通りです。
- 気流の問題
VDT作業に伴う眼の痛みや疲れは、これまで照明環境が大きなリスク要因としてあげられていたが、我々の調査(文献1)により、照明環境が整ってきた現在では、照明環境に加えて空調機からの気流が眼の疲れや痛みの大きなリスク要因になっていることを世界で初めて明らかにした。この結果を受けて
(a) 空調:「身体に当たる気流は、気にならない程度(0.1m/s以下)にしましょう」と記載した。 - 照度の問題
それ自体が発光体であるディスプレイにおいて、それまでの書類の読み書きと同じ照明条件でよいのか検証されていなかった。我々は瞳孔の動きを測定し照明環境を評価し、瞳孔が安定する明るさを特定した(文献2)。この結果は他の研究結果とも矛盾しないことから、
(b) ディスプレイ:「書類やキーボードなどの水平面では、新聞が楽に読める程度(300 lx以上)の明るさが必要です」と記載した。 - 眼の見開き状態の問題
VDT作業では視線が高くなるので、目が見開かれた状態になる。我々は開眼面積の実測値法を開発し(文献3)、VDT画面の高さと開眼面積の比較(文献4)、(文献5)を世界で初めて行い、視線が高くなると涙の量が減ることを確認した(文献6)。これらの結果に基づき、
(b) ディスプレイ:「画面の位置が高すぎると眼を大きく開くことになるので、涙の蒸発量が増えてドライアイとなり、眼が疲れてしまいます」と記載した。
(c)パソコン作業時間:「パソコン作業では、目を大きく開きがちになるために空気に触れる眼の部分が多くなり・・・眼が乾き刺激を受けやすくなります」と記載した。 - ディスプレイの高さ
ノートパソコン使用者のほうがデスクトップパソコン使用者よりも、首、肩等への訴えが多い。その原因を探るため、まずディスプレイの高さが姿勢や筋肉に及ぼす影響を定量的に測定し(文献7)、次いでノートパソコン使用時とデスクトップパソコン使用時とで、姿勢及び筋肉への影響を測定した(文献8)。これらの結果より、
(b) ディスプレイ:「画面の位置が低すぎると、首を大きく曲げた姿勢や顔を前に突き出す姿勢になり、首や肩、腰が疲れてしまいます。」と記載した。 - 眼と画面の距離
VDT作業での適切な視距離はいくつか異なる値が推奨されていた。そこで、我々は真っ暗な中で眼が休んでいる状態で自然に生ずる焦点距離(ダークフォーカス)が眼に負担を掛けない視距離であると考え、その距離を世界で初めて測定した(文献9)。その結果から、
(b) ディスプレイ:「眼と画面の距離は、40cm以上とるようにしましょう」と記載した。 - 休憩の問題
種々の先行研究と同様に、我々の調査(文献1)においても、VDT作業時間は眼、首、腕、腰の痛みに関連したことから、
(c) パソコン作業時間:「1時間以上つづけて作業しないようにしましょう」と記載した。 - マウスの問題
VDT作業においてマウスの使用は推奨されているが、その形状については問題視されてこなかった。しかし、我々の調査(文献1)において、マウスの形状が大きすぎて手に合っていない者は、合っている者に比べて、首・肩のこりや痛みの訴えが多いことが分かった。これを受けて、
(d) 入力機器:「マウスのクリック・ボタンが押しにくい時は、ひとまわり小さいマウスに変えましょう」と記載した。 - 椅子と机の高さの問題
文献10などの先行研究と同様に、我々の調査(文献1)においても、椅子や机の高さが腰のこりや痛みに大きく影響した。特に、女性においてその結果は顕著に表れた。これにより、 (e) 椅子と机:「高さ調節ができる椅子や机を使いましょう」と記載した。
- 作業スペース、コミュニケーションの問題
これらの項に関しては、文献10などの先行研究、海外のガイドライン、さらには我が国のVDT作業者へのインタビューなどの結果を元に作成した。
- 当研究所の研究員が関わった研究論文
- 岩切一幸,毛利一平,外山みどり,堀口かおり,落合孝則,城内 博,斉藤 進.VDT作業者の身体的疲労感に影響する諸因子の検討.産業衛生学雑誌 46,201-212,2004.
- Susumu Saito, Midori Sotoyama, Shin Saito and Sasitorn Taptagaporn, Physiological indices of visual fatigue due to VDT operation: Pupillary reflexes and accommodative responses, Industrial Health, 32, 57-66, 1994.
- Midori Sotoyama, Maria Beatriz G. Villanueva, Hiroshi Jonai and Susumu Saito, Ocular Surface Area as an informative index of visual ergonomics, Industrial Health, 33, 43-56, 1995.
- Midori Sotoyama, Hiroshi Jonai, Susumu Saito and Maria Beatriz G. Villanueva, Analysis of Ocular Surface Area for comfortable VDT workstation layout, Ergonomics, 39, 877-884, 1996.
- Susumu Saito, Hiroshi Jonai, Maria Beatriz G. Villanueva and Midori Sotoyama, Ergonomic aspects of Flat Panel Display and large-size CRT screen, Proceedings of the 7th Conference on Human-Computer Interaction, Advances in Human Factors/Ergonomics, 21A, 639-642p., Elsevier, 1997.
- Satoru Abe, Midori Sotoyama, Sasitorn Taptagaporn, Shin Saito, Maria Beatriz G. Villanueva and Susumu Saito, Relationship between vertical gaze direction and tear volume, Selected proceedings of the Fourth International Scientific Conference on Work with Display Units, Milan, Italy, 95-99, 1995 .
- Maria Beatriz G. Villanueva, Hiroshi Jonai, Midori Sotoyama, Naomi Hisanaga, Yasuhiro Takeuchi and Susumu Saito, Sitting posture and neck and shoulder muscle activities at different screen height settings of the Visual Display Terminal, Industrial Health, 35, 330-336, 1997.
- Maria Beatriz G. Villanueva, Hiroshi Jonai, Midori Sotoyama, Naomi Hisanaga, Yasuhiro Takeuchi and Susumu Saito, Ergonomic aspects of portable personal computers with flat panel displays (PC-FPDs): Evaluation of posture, muscle activities, discomfort and performance, Industrial Health, 36, 282-289, 1998.
- Sasitorn Taptagaporn, Maria Beatriz G. Villanueva, Hiroshi Jonai and Susumu Saito, Visual comfort in VDT workstation design, J. Human Ergology, 24, 84-88, 1995.
- 先行研究
- Etienne Grandjean. Fitting the task to the man – A textbook of occupational ergonomics. Taylor & Francis, 1988.
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