労働安全衛生総合研究所

新人紹介

人間工学・リスク管理研究グループ   時澤 健(ときざわ けん)


 平成24年7月1日付けで任期付研究員として着任いたしました。前任地の早稲田大学(人間科学学術院及びスポーツ科学学術院)では、体温調節のメカニズムについて、概日リズム、熱中症、冷え性、身体運動などをテーマに、基礎的な研究を行っていました。
 これらの研究の中では、例えば熱中症に関連して、脱水状態になると「暑さの感覚」が鈍くなることを見い出しました。これまでも脱水状態に陥ることが危険であることはよく知られていましたが、それは汗をかけなくなることや皮膚への血流が制限されることなど、「自律性の体温調節」への悪影響を指していました。しかし、脱水状態になり、暑さ感覚が鈍くなることで、暑い場所からの逃避行動や熱放散を促すような行動などの「行動性体温調節」にまでも悪影響を及ぼすことがわかったため、脱水状態を意識した場合は、通常以上に「対暑行動」を取る必要があることがわかりました。
 通常、体温は大きな変動を示さないことから、一見して頑丈なシステムのように見えます。そこにはヒト特有のすぐれた仕組みが備わっているからと簡単に説明することもできますが、近年の地球環境の変動や社会環境の変化は、それを揺るがしつつあると言えます。このような変化は、労働衛生に関わる問題としても切り離すことはできません。猛暑の中での屋外作業や節電下における職場作業は、リスク管理と対策が必要とされる喫緊の課題となりました。
 今後は、これまでの基礎的な研究で得た専門知識を生かしながら、労働現場で役に立つ応用的な研究へと、専門にとらわれず、当研究所でしか達成できない労働衛生上の課題を解決していきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
(所属学会:日本生気象学会、日本生理学会、日本体力医学会、日本時間生物学会)

刊行物・報告書等 研究成果一覧