医療施設における非電離放射線
非電離放射線は電波や赤外線、可視光線、一部の紫外線(周波数では300 GHz以下)などで、原子を電離・励起するようなエネルギーを持たず生体に直接的作用を及ぼさないことから広く臨床現場で応用されています。
一方、高強度の非電離放射線のばく露は一時的体調変化(短期的影響)が生じるため、発生源近くで就労する作業者においては適切な知識の取得と防護が必要です。また、短期的影響以外については、近年の女性就業者の活躍にともない非電離放射線による生殖・発生への影響に関心がもたれています。しかしながら、上記の事項に関してこれまで国内で体系だった情報発信がなされていない状況でした。
このため、本著では医療施設における光・超音波以外の非電離放射線について、就業者を対象とした情報発信を目的としました。ここでは、非電離放射線の短期的影響とその防護に関する考え方のほか、特にMRI環境で関心の高い「静磁界による生殖・発生への影響」の情報整理と文献調査を行いましたのでご紹介いたします。
本著をご覧いただくことで非電離放射線の生体影響や防護手法に理解を深めていただくとともに、特に妊娠中のご就業者の方と管理者の方の話し合いにおいて本著をお役立ていただければと思います。