建設業における安全活動の実態等に関するアンケート調査結果
1.本調査の目的
本調査は、建設企業のリスクマネジメント等の安全活動の実態、安全対策上の課題等についてアンケート形式で聴取して集計分析するもので、中小建設企業のリスクマネジメント推進方策の検討に資する資料の作成を目的としています。
2.調査方法
- 調査対象:全国の建設企業約3,000社(有効送付数2,984)
- 調査方法:調査票を郵送し、企業の安全担当責任者に回答依頼
- 調査時期:2007年2月
- 回収率 :回収998通、回収率33.4%
3.主な調査結果
- 企業の安全衛生管理活動の実態
安全衛生管理業務に関わる専任者の数や予算は、3年前と比べほとんど変わらないと答えた企業が7~8割と大半を占めた。安全衛生管理活動の阻害要因としては、過度の安値受注(ダンピング)による予算縮減が最も多く5割近くを占めました。安全対策上の最重要課題は、大規模企業が災害防止対策関連を最も多く答えた一方、中小規模企業は安全意識向上に関わるものが最も多く見受けられました。 - リスクアセスメント実施上の課題
従来、評価対象となる個別作業の危険性の他には、作業員の不安全行動による危険性、厳しい工期に伴う危険性を評価することの重要性をあげる回答者が多かった。リスクアセスメント実施による現場技術者の負担が「かなり大きい」(23.5%)、「やや大きい」(59.8%)を合わせて8割を超えた。中小企業に対するリスクアセスメント導入支援策が必要との回答は、「大いに必要」(34.9%)、「ある程度必要」(51.3%)で9割近くを占めています。 - 労働安全衛生マネジメントシステム導入の実態とその効果
労働安全衛生マネジメントシステムを構築完了または構築中と答えた企業は25.2%を占めた。システム導入後2 年以上経過した74 社を対象に、労働安全衛生マネジメントシステムの導入により労働災害が減少したかを尋ねたところ、「減少した」(33.8%)、「まだ減少していないが今後減少すると思う」(43.2%)と、8割近くの企業がシステム導入による労働災害防止効果をあげています。 - 重層下請構造による安全上の問題
重層下請構造による安全上の問題について、最も多かったのが「労働者を直接雇用していない下請業者(中間層の下請業者等)の安全意識が低い」(64.8%)でした。 - 派遣労働者の安全教育
現場で派遣技術者を採用している企業は16.6%を占めた。派遣技術者の安全教育は、「派遣元実施+自社でも実施」(48.2%)、「派遣元実施せず、自社で実施」(24.7%)と自社で実施している企業が7割を超えています。 - ヒューマンエラー対策の重要性
ヒューマンエラー対策の重要性について、「強く思う」(69.0%)、「ややそう思う」(24.2%)と9割以上がその重要性を認めています。ただ一方で、事故やヒヤリハットが起きたとき、「これはヒューマンエラーだから仕方がない」と思うことが「よくある」(5.2%)、「時々ある」(47.8%)を合わせて5割を超え、現場でのヒューマンエラー対策の困難さが伺われます。 - 中小企業の自主的安全活動を促進させる有効方策
中小企業経営者の安全意識を向上させる有効策としては、「経営者安全研修の充実」(57.3%)、「労働災害に伴う損失額の計測手法の構築」(41.3%)が上位を占めました。