労働安全衛生総合研究所

電気安全研究グループの活動状況

1.電気安全研究グループの業務
 電気安全研究グループでは、電気エネルギーに起因して発生する労働災害の防止、電気・電子・情報技術の産業安全への応用等を目的として、静電気による着火現象の解明と帯電防止技術の開発、電磁ノイズによる電子装置・システムの誤動作の防止技術、先駆的現象検出技術の開発、可燃性物質の着火エネルギーデータの測定、画像を用いた安全保護装置の開発等に関する研究を行っています。また、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置に関わる行政支援研究などを実施しています。
 このように研究業務、行政支援業務とともに、静電気を着火源とした爆発災害などの災害調査も行っています。

2.平成21年度の主な研究業務
 平成21年度は、次の課題を中心として研究業務を実施しています。

(1)行政支援研究

 1)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置に係る調査研究
 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格が改正されることに伴って、当該規格に準拠した「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置の接続及び使用の安全基準に関する技術上の指針」の見直しを行います。本調査研究によって、指針の改正原案を検討します。

(2)厚生労働科学研究費による研究

 1)静電気リスクアセスメント手法の確立
 平成18年4月1日に施行された改正労働安全衛生法によって、設備、原材料等や作業行動等に起因する危険性・有害性等の調査(リスクアセスメント)を行い、その結果に基づき、必要な措置を実施することが努力義務として明示されました。本研究では静電気リスクアセスメント手法を開発して、静電気危険性のある事業場に適用します。また、個別の工程に対するリスクアセスメント手法を付加して、当該手法を現場に適用します。

(3)文部科学省科学研究費補助金による研究

 1)コンピュータシミュレーションによる除電の高性能化
 静電気による災害・障害の対策として除電器は一般的に使用されていますが、除電現象の理解や技術は経験に大きく依存しています。本研究では、コンピュータシミュレーションを用いて除電用イオンの挙動特性を解明します。そのためのプログラムを開発して、標準的なモデルへの適用を試みます。

(4)基盤的研究 (国内外における労働災害、職業性疾病、産業活動等の動向を踏まえて、長期的視点から労働安全衛生上必要とされる基盤技術を高度化するための研究)

 1)直流活線接近警報機の開発に関する研究
 本研究では、直流の活線電路に作業者が接近していることを警告して、活線近接作業に伴う感電災害を防止するための接近警報機の開発を目的としています。今年度は具体的な構造を検討して、プロトタイプを試作します。

 2)着火爆発を誘発する放電現象の解明
 高電圧設備の絶縁不良や帯電電荷に起因する放電は、可燃性物質の着火爆発を誘発することがあります。本研究では、センサ自体が放電の危険性を増大させることなく、放電時に発生する電磁パルスを測定する手法を検討します。併せて、電磁パルスのスペクトル分布などから放電による着火危険性を推定する手法を研究します。

 3)静電気対策用コンテナの性能評価法に関する研究
 静電気対策用フレキシブルコンテナの国際的なIEC規格が制定されましたが、構造的要件、内装袋との併用、一般コンテナの性能試験方法等に課題が残っており、本研究では、次期IEC規格改訂のための技術的な基礎資料を得ることを目的としています。併せて、静電気対策用フレキシブルコンテナを普及・促進するために安全ガイドを制定します。今年度は静電気対策用コンテナを使用したときのトナーおよび金属粉じんの危険性を検討するとともに、IEC規格への技術的な対応を行います。

 4)汎用形防爆構造除電器の開発
 本研究では、可燃性ガス・蒸気または粉じんが存在する雰囲気で使用可能な汎用性のある防爆構造除電器の開発を目的としています。具体的には、汎用形防爆構造除電器の防爆構造および除電方式に関する検討、除電器の試作・改良を行い、粉じん、ガス・蒸気の雰囲気下で除電性能および防爆性能を評価します。今年度は汎用形防爆構造除電器のプロトタイプを製作し、現場に適用しての実験と改良を行います。

 5)流動層における静電気放電による爆発・火災の防止に関する研究
 流動層技術は造粒などに応用され、流動層造粒では、装置の下部から熱風を送り粉体を流動化した状態で造粒します。このような流動層では粉体のはく離時による静電気のトラブルや火災・爆発が問題となっています。本研究では、流動層における静電気の帯電特性を解明するために、実験用の流動層装置を試作して、粉体の挙動や静電気の帯電特性を実験的に解明します。

(電気安全研究グループ部長 冨田一)


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